海外に居住することで所得税の節税を行った大手企業の元会長が20億円超の申告漏れを指摘されました。 元会長は税理士に相談せず、ご自身の判断で海外移住を計画し実行されたのでしょう。 あまりにも素人的な発想で、海外の事情を知らずに行動していることが手に取るようにわかります。 元会長個人の顧問税理士を側に置いておられなかった理由も十分に理解できますが、それが失敗の原因の一つであることは間違いありません。 (2015年2月4日:時事通信) 所得二十数億円申告漏れ=接着剤スリーボンド元会長―「海外居住」理由・東京国税局 工業用接着剤製造大手「スリーボンド」(東京都八王子市)の鵜久森一郎元会長(67)が、東京国税局の税務調査を受け、2013年までの5年間で所得計約二十数億円の申告漏れを指摘されたことが4日、分かった。 「海外居住」を理由に申告していなかったといい、無申告加算税などを含めた所得税の追徴税額は約5億円。 既に申告し、納税したとみられる。 関係者によると、鵜久森元会長はスリーボンドのシンガポールや香港など複数の海外子会社から、役員報酬として毎年計約2億~5億円を受領していたが、米国などに住む海外居住者に当たるとして、日本で報酬を申告していなかった。 しかし、国税局が調査した結果、日本に1年の半分以上滞在していたことが判明。 国税局は生活の本拠は日本にあると認定し、報酬は日本で申告する必要があると指摘、元会長が既に海外で納税した分を差し引いて追徴したとみられる。 また、鵜久森元会長の知人女性が13年に3億円弱で購入した東京都港区のマンションの部屋や所有する2億円相当の宝飾品について、資金は元会長が拠出するなどしていたとして、国税局は元会長からの贈与に当たると判断。 女性に申告漏れを指摘し、贈与税約2億円を追徴した。 スリーボンドのホームページなどによると、同社は鵜久森元会長の父・税氏(故人)が1955年に創業し、工業用接着剤の製造販売で国内大手にまで成長させた。 海外約20カ国に拠点があり、13年度のグループ売上高は約669億円。 元会長は99年から会長を務めて10年12月に退いたが、その後も海外子会社の役員として、報酬を受領していたとみられる。 元会長には親族を通じて文書で取材を申し込んだが、返答はない。 スリーボンドは「税務調査は個人のことなので答えられない」と話した。