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2015/02/08
スリーボンド元会長、海外移住に失敗し20億円超の申告漏れ

海外に居住することで所得税の節税を行った大手企業の元会長が20億円超の申告漏れを指摘されました。

元会長は税理士に相談せず、ご自身の判断で海外移住を計画し実行されたのでしょう。
あまりにも素人的な発想で、海外の事情を知らずに行動していることが手に取るようにわかります。

元会長個人の顧問税理士を側に置いておられなかった理由も十分に理解できますが、それが失敗の原因の一つであることは間違いありません。


(2015年2月4日:時事通信)
所得二十数億円申告漏れ=接着剤スリーボンド元会長―「海外居住」理由・東京国税局

工業用接着剤製造大手「スリーボンド」(東京都八王子市)の鵜久森一郎元会長(67)が、東京国税局の税務調査を受け、2013年までの5年間で所得計約二十数億円の申告漏れを指摘されたことが4日、分かった。
「海外居住」を理由に申告していなかったといい、無申告加算税などを含めた所得税の追徴税額は約5億円。
既に申告し、納税したとみられる。

関係者によると、鵜久森元会長はスリーボンドのシンガポールや香港など複数の海外子会社から、役員報酬として毎年計約2億~5億円を受領していたが、米国などに住む海外居住者に当たるとして、日本で報酬を申告していなかった。
しかし、国税局が調査した結果、日本に1年の半分以上滞在していたことが判明。
国税局は生活の本拠は日本にあると認定し、報酬は日本で申告する必要があると指摘、元会長が既に海外で納税した分を差し引いて追徴したとみられる。

また、鵜久森元会長の知人女性が13年に3億円弱で購入した東京都港区のマンションの部屋や所有する2億円相当の宝飾品について、資金は元会長が拠出するなどしていたとして、国税局は元会長からの贈与に当たると判断。
女性に申告漏れを指摘し、贈与税約2億円を追徴した。

スリーボンドのホームページなどによると、同社は鵜久森元会長の父・税氏(故人)が1955年に創業し、工業用接着剤の製造販売で国内大手にまで成長させた。
海外約20カ国に拠点があり、13年度のグループ売上高は約669億円。
元会長は99年から会長を務めて10年12月に退いたが、その後も海外子会社の役員として、報酬を受領していたとみられる。

元会長には親族を通じて文書で取材を申し込んだが、返答はない。
スリーボンドは「税務調査は個人のことなので答えられない」と話した。





【国税は早くから目を付けていたはず】

国税は早くから元会長の動きを察知し、泳がせるだけ泳がせ、知人女性への贈与税も含めて取れるだけの税金を根こそぎ持っていったという印象を受けます。

元会長の入国・出国の履歴確認や、知人女性に関する資金の動きを把握し、その裏付けを取る作業だけでも相当な時間を要するはずです。
元会長が会長職から退いたのが2010年12月、そして今回税務調査の対象になったのは2008年から2013年の5年間。
さらに、元会長が知人女性のために資金を出したのが2013年です。

国税は元会長が会長職から退いた時点からマークしていたのではないでしょうか。

 

【この時期に報道されたのは出国税を意識してのものか?】
国税は入念な準備をして、元会長の税務調査を2014年8月からスタートさせたはずです。
そして、税務調査の結末が報道されたのは2015年2月初旬です。
なぜこの時期に報道されたのでしょうか。

その理由として、次の2つが考えられます。
(1)税務調査が長引き、2015年1月末に結論が出た
(2)出国税を周知させるため、あえてこの時期に報道させた

出国税については、こちらの相続税対策ブログにてご紹介しています。
・出国税の導入へ、海外移住による税逃れ防止のため(2014/10/27)

(1)税務調査が長引き、2015年1月末に結論が出た
国税としては、2月から確定申告が始まりますので、1月末までに結論を出したいという気持ちがあります。
税務調査が難航し、税務調査の結論を出す期日に何とか間に合わせた可能性があります。
報道させる時期を調整できず、偶然にこの時期に報道されたというストーリーです。

(2)出国税を周知させるため、あえてこの時期に報道させた
平成27年度税制改正において、出国税の導入が予定されています。
出国税は海外移住による税金逃れを防止するために導入されますが、報道機関を通じて「海外移住をしても税務調査で追徴できる」ことを周知するために、あえてこの時期(2月初旬)に報道させた可能性があります。
報道させる時期を調整し、絶妙なタイミングがこの2月上旬だったというストーリーです。

 

【日本人は「究極の節税=海外移住」に執着しすぎている】
この報道の論点は、申告漏れを指摘されたことではなく、このような報道がされることで元会長の名前に傷がついてしまったということです。
しかも、税務調査を受けて申告漏れを指摘されただけではなく、知人女性の存在も暴露されてしまうという辱めも受けました。

同様の事例として、2014年5月にも上場企業の会長が海外移住による節税に失敗し、追徴課税を受けています。
詳しくは、こちらの相続税対策ブログにてご紹介しています。
・海外移住での節税失敗、上場企業会長が10億円申告漏れ(2014/05/26)

これだけの規模の会社の元会長が、なぜこのような失態を演じてしまったのでしょうか。
その理由は、日本人が「節税=海外移住」に執着しすぎているためです。
残念なことに、日本の税理士でさえも「究極の節税は海外移住である」となぜか信じてしまっています。

なぜ、節税をするのに海外移住が必要なのでしょうか?
税理士長嶋から言わせれば、視野が狭すぎるため物事の本質が見えていないとしか思えません。

 

【相続税対策参考ブログ】
・海外移住は本当に究極の相続税対策なのか?

・相続税税務調査対策ガイド

・海外移住による相続税対策の税制改正、海外居住10年以上に(2016/10/25)

・タックスヘイブンにペーパーカンパニー作り所得隠し11億円(2015/05/12)

・邱永漢氏遺族、海外財産申告漏れ20億円超(2015/05/01)

・出国税導入により相続税と出国税の二重課税となる場合も(2015/02/11)

・トステム創業家110億円申告漏れ、相続税60億円追徴課税(2014/12/24)

・欧米の富裕層の相続税対策は日本人にも効果があるのか?(2014/08/16)

・監査法人から提案された相続税対策に海外移住は不安(2014/07/19)

・富裕層・海外資産に対する所得税の税務調査が活発化(2013/11/08)

・究極の相続税対策は海外移住ではない(2013/10/22)

・相続税対策を監査法人に相談したが解決できない(2013/04/26)

・相続税対策のための海外移住、夫の提案に妻は断固反対(2013/01/20)


・相続税対策を目的とした海外移住が失敗する理由(2012/10/17)

・相続税の節税対策に海外移住をする必要はない(2011/10/21)


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