2012年に死去した邱永漢氏の遺族が国税局による相続税の税務調査を受け、香港などにある10数億円の相続財産の申告漏れを指摘されました。
また、併せて所得税の税務調査も受け、香港で受け取っていた配当金10億円の申告漏れを指摘されました。
相続税と所得税合わせて20億円超の申告漏れ、9億円の追徴課税を受けたようです。
(時事通信:2015年4月29日)
邱永漢さん遺族が申告漏れ=香港の遺産など二十数億円―東京国税局
直木賞作家で「金もうけの神様」とも呼ばれ、2012年5月に88歳で死去した経済評論家の邱永漢さん=香港居住=の日本に住む遺族3人が東京国税局の税務調査を受け、香港などにある十数億円分の海外遺産の申告漏れを指摘されたことが29日、分かった。
相続した香港の遺産から得ていた配当についても、所得約10億円の申告漏れがあった。
相続税と所得税の追徴税額は、過少申告加算税などを含めて計約9億円。
3人は既に修正申告し、納税したもようだ。
3人のうち妻と長男は、香港の資産について、義務付けられた国外財産調書の提出をしておらず、加算税は通常より重くなった。
一方、長女は提出していたため軽減された。
相続税は、死亡した人が国外居住でも、遺族が国内居住なら、国内外の全遺産に課税される。
関係者によると、邱さんは生前、建築機械メーカー大手の日立建機が中国本土で設立した関連会社2社の株を保有する香港法人の大株主で、香港で配当を受領していた。
邱さんの死後、遺族は香港法人の株式を相続財産として申告したが、国税局は遺族側による株式の評価額は実態より約8億円低いと指摘。
申告漏れ額は他の遺産の分も合わせ十数億円に上った。
また、遺族は13年までの2年間で香港法人から約10億円の配当を香港の銀行口座で受け取りそのまま預金するなどしていたが、所得の申告をせず、妻と長男は国外財産として報告もしていなかった。
【相続税の申告を税理士に依頼していないのではないか?】
相続税・所得税合わせて20億円超の申告漏れを指摘されましたが、
税理士に相談したとは思えない初歩的なミスをされています。
相続税・所得税の申告について、税理士に依頼しなかったのではないかと想像します。
相続税の申告期限は2013年3月ですが、税務調査が終了したのは2015年4月中だと思われます。
国税は相続財産の申告漏れを容易に把握できたため、それほど時間をかけずに相続税の税務調査に取り掛かることができたのでしょう。
しかも、税務調査を短期間に終わらせていることから、海外財産の把握は困難ではなかったと想像します。
【国税はメディアの力を借りて無料で広報するのが常套手段】
注目すべきは、わざわざ「国外財産調書」について事細かに報道されていることです。
妻と長男は国外財産調書を提出しておらず、長女だけが国外財産調書を提出していた。
国税はしばしば申告漏れや脱税などの報道を通じて、メディアの力を借りて無料で広報するのが常套手段となっていますが、今回は次のことを注意喚起したかったのでしょう。
・国外財産の存在は調べればわかるため隠してもムダです
・国外財産調書のアメとムチをしっかりと使い分けています
・国外財産調書を提出していない人は早く提出してください
【海外財産を隠そうとするからややこしくなる】
国外財産調書を提出したほうがいいのか?
これは海外財産をお持ちの方から必ずと言っていいほど出てくる質問です。
私どもでは多くの場合、次のようにお答えしています。
「国税は海外財産の存在を知っているので、国外財産調書は提出したほうがいいと思います。」
海外財産の存在は自分だけが知っている、そう思いこんでいる人が少なくありません。
国税は海外財産の存在を知っているのですから、国外財産調書を提出せず海外財産を隠した「つもり」になっているだけで、単なる自己満足に過ぎません。
国外財産調書について、私どもがいつも申し上げることは次のようなことです。
・海外財産を隠そうとするからややこしいことになる
・正々堂々と相続税対策をすれば何も問題ないはずです
【相続税対策参考ブログ】
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