週刊ダイヤモンド2012年10月20日号にて「富裕層のカネと知恵」というテーマで特集が組まれました。 富裕層による相続税や所得税の節税を目的とした海外移住や海外投資がブームだが、意外にも失敗されている方が多いそうです。 この特集の中の「相続税対策を目的とした海外移住」について、税理士長嶋の感想をご紹介したいと思います。 税理士長嶋の個人的な感想は一言で次のようなものになります。 「海外移住で失敗することは想定内であり、想定外だと論調している記事内容は想定が甘すぎると言わざるを得ない。」 【相続税対策を目的とした海外移住が失敗している】 ・日本に帰りたい ・子供の国籍を日本に戻したい などの不思議な相談が増えているそうだ。 ◎税理士長嶋の感想 何ら不思議なことではなく当然の結果です。 なぜこの相談が増えていることが「不思議」に思うのかが、むしろ理解できません。 【海外移住の失敗は想定外なのか?】 海外移住をされる方の多くが相続税対策を目的としていますが、日本国の財政問題・原発問題などのジャパンリスクを避けるという目的もあります。 一年ほど前、週刊ダイヤモンドにおいて「日本を見捨てる富裕層、海外へ資産移転が始まった」という特集が組まれたが「日本に戻りたい」という事態が想定外だという。 ◎税理士長嶋の感想 想定が甘すぎると言わざるを得ない。 新聞・雑誌などのメディアに掲載される記事程度の知識レベルで海外移住を実行するのはとても危険であることは明らかです。 税理士などに相談するにしても、相談する相手がどの程度の知識レベルなのか見極める必要があります。 なぜなら、この分野で実務をしていないとすれば、その知識レベルは新聞・雑誌レベルと同じである可能性が高いでしょう。 また、記事の内容が「日本に戻りたい」という相談が増えているという部分でストップしてしまっていることがとても残念でなりません。 これから先、最も重要な問題が出てくることが想定されるにもかかわらず、この問題点を指摘しない(できない)のであれば、記事にしないほうがまだマシです。 【人気の海外移住先はシンガポール?】 相続税や所得税の節税のため、海外移住先にシンガポールを選ぶ方が多いという。 スイスは距離的な問題、香港は日中関係のカントリーリスクから敬遠されているという。 シンガポールへの移住が難しくなっているので隣国のマレーシアが注目されているという。 ◎税理士長嶋の感想 シンガポールが移住先として挙がるとき、なぜかメリットしか語られません。 なぜデメリットを検討しようとしないのか、あるいはデメリットを記事に載せようとしないのか。 とても不思議なことです。 「人気がある=安心・安全」にはなりえません。 また、シンガポールから近いという理由だけでマレーシアが注目されているとすれば、とても危険です。 なぜ、マレーシアのデメリットは語られないのでしょうか。 このような中途半端な情報をもとにマレーシアで不動産投資を実行することは慎重になるべきです。 【税金対策のための海外移住はなぜブームになったのか?】 相続税対策を目的とした海外移住は成功するのが難しいことだという。 ◎税理士長嶋の感想 海外移住に失敗する方がおられるのは、海外移住を煽っている税理士やメディアの人災でしょう。 「究極の相続税対策は海外に移住すること」という常識を改めるべきです。 なぜ、相続税対策に海外移住が必要なのでしょうか。 お客様が日本で生活しながら相続税対策を行うことは十分に可能です。 日本の常識から離れるべきです。 このことについてのご相談事例を、2011年10月21日付の相続税対策ブログ「相続税の節税対策に海外移住をする必要はない」にてご紹介しています。 【相続税対策参考ブログ】 ・海外移住は本当に究極の相続税対策なのか? ・海外移住による相続税対策の税制改正、海外居住10年以上に(2016/10/25) ・出国税導入により相続税と出国税の二重課税となる場合も(2015/02/11) ・スリーボンド元会長、海外移住に失敗し20億円超の申告漏れ(2015/02/08) ・出国税導入により相続税対策のための海外移住(2014/12/02) ・出国税の導入へ、海外移住による税逃れ防止のため(2014/10/27) ・監査法人から提案された相続税対策に海外移住は不安(2014/07/19) ・海外移住での節税失敗、上場企業会長が10億円申告漏れ(2014/05/26) ・究極の相続税対策は海外移住ではない(2013/10/22) ・相続税対策のための海外移住、夫の提案に妻は断固反対(2013/01/20) ・資産海外移転、海外投資クラブにご注意(2012/10/11) ・資産逃避、日本を見限る個人マネー|日経ビジネス(2012/02/14) ・相続税対策に海外法人の活用でトラブル多発(2012/01/04)