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2015/02/11
出国税導入により相続税と出国税の二重課税となる場合も

平成27年度税制改正で導入が予定されている「出国税」。
1億円以上の有価証券などを有する居住者が国外に転出したときに、その有価証券などの譲渡があったものとして所得税を課税するもので、平成27年7月1日以後に国外転出する場合に適用されます。
このほど税制改正大綱が公表され、その全容が明らかとなりました。
出国税について、次の2つがポイントになるものと思われます。

(1)有価証券には「未上場株」も含まれること
(2)相続税や贈与税と出国税(所得税)の二重課税になる可能性があること

 

(1)有価証券には「未上場株」も含まれること
出国税の対象となるのは、次の条件を満たす人です。
・所得税法に規定する有価証券若しくは匿名組合契約の出資の持分や決済をしていないデリバティブ取引、信用取引を有すること
・その有価証券などの金額が1億円以上であること
・国外転出の日前 10 年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超である者

所得税法に規定する有価証券は、金融商品取引法2条1項に規定する有価証券とされています。
金融商品取引法2条1項に規定する有価証券は、国債・地方債・上場株などとされており、外国株式や未上場株も含まれます。

未上場株も出国税の対象となりますが、未上場株は基本的には誰も買ってくれません。
海外でのビジネス拡大を計画している会社経営者は海外移住をする可能性がありますので、換金性が乏しい未上場株が出国税の対象になるのは辛いものがあるでしょう。

一方、国税の立場からすると、未上場株を出国税の対象にしなければ、新たに未上場の持株会社を設立し、未上場の事業会社の株だけでなく上場株を保有させようとする人が出てきますので、これを封じ込めるという意図も十分に理解できます。
将来的には不動産も出国税の対象になるでしょうから、未上場の持株会社(資産管理会社)に不動産を保有させることで出国税の対象から逃れようとする人も出てきます。
このようなことから、未上場株を出国税の対象にしなければ出国税を導入しても骨抜きな制度になってしまうことは容易に想像できます。

 

(2)相続税や贈与税と出国税(所得税)の二重課税になる可能性があること
出国税は平成27年7月1日以後に国外転出する場合だけでなく、1億円以上の有価証券などを保有する居住者の相続や贈与により、非居住者が有価証券などを取得した場合も対象となります。

相続や贈与により有価証券を取得した相続人や受贈者に相続税や贈与税が課税される場合には、それぞれ相続税や贈与税が課税されます。
これに加えて、有価証券を相続させた、あるいは贈与をした被相続人や贈与者には、出国税として所得税が課税されることになります。

同一の有価証券について、相続税若しくは贈与税、さらに出国税である所得税も課税されることになりますので、ある意味二重課税のような状態になります。
相続税対策などで海外移住を検討する際には注意が必要でしょう。

 

 

【海外移住は簡単ではない】
節税のために海外移住をされた上場企業会長などが国税から申告漏れを指摘されるという報道が、昨年から相次いでいます。
・スリーボンド元会長、海外移住に失敗し20億円超の申告漏れ(2015/02/08)
・海外移住での節税失敗、上場企業会長が10億円申告漏れ(2014/05/26)

このような会社経営者がなぜ海外移住に失敗しているのでしょうか。
日本の税制は国税が「後出しじゃんけん」をする仕組みになっていますので、どう考えても国税に勝てるはずがありません。

一方で、アメリカやスイスなど富裕層の歴史がある国々では日本のように「後出しじゃんけん」ができるような仕組みになっていません。
税制の仕組みにおいても、諸外国から比べると日本人は非常に可哀想な立場に置かれています。

 

 

【なぜ海外移住という幼稚な節税策に走ってしまうのか?】
究極の節税対策は海外移住である。
このようなことがしばしば言われますが、本当にそうなのでしょうか?

税理士長嶋から言わせれば、週刊誌などでも取り上げられる海外移住が究極の節税対策であるはずもなく、海外移住は誰もが考えつく幼稚な節税対策です。
その理由は「海外移住は本当に究極の相続税対策なのか?」にて詳しくご紹介しています。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・出国税導入により相続税対策のための海外移住(2014/12/02)

・出国税の導入へ、海外移住による税逃れ防止のため(2014/10/27)

・監査法人から提案された相続税対策に海外移住は不安(2014/07/19)

・究極の相続税対策は海外移住ではない(2013/10/22)

・相続税対策のための海外移住、夫の提案に妻は断固反対(2013/01/20)

・相続税対策を目的とした海外移住が失敗する理由(2012/10/17)

・相続税の節税対策に海外移住をする必要はない(2011/10/21)

 

 

【平成27年度税制改正大綱:出国税】
(1)国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の創設
① 特例の概要
国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいう。以下同じ。)をする居住者が、所得税法に規定する有価証券若しくは匿名組合契約の出資の持分(以下「有価証券等」という。)又は決済をしていないデリバティブ取引、信用取引若しくは発行日取引(以下「未決済デリバティブ取引等」という。)を有する場合には、当該国外転出の時に、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額により当該有価証券等の譲渡又は当該未決済デリバティブ取引等の決済をしたものとみなして、事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算する。
イ 当該国外転出の日の属する年分の確定申告書の提出時までに納税管理人の届出をした場合
当該国外転出の時における当該有価証券等の価額に相当する金額又は当該未決済デリバティブ取引等の決済に係る利益の額若しくは損失の額
ロ 上記イに掲げる場合以外の場合
当該国外転出の予定日の3月前の日における当該有価証券等の価額に相当する金額又は当該未決済デリバティブ取引等の決済に係る利益の額若しくは損失の額

② 特例の対象者
本特例は、次のイ及びロに掲げる要件を満たす居住者について、適用する。
イ 上記①イ及びロに定める金額の合計額が1億円以上である者
ロ 国外転出の日前 10 年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超である者
(注)上記の「国内に住所又は居所を有していた期間」には、下記④の納税猶予を受けている期間を含み、出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格をもって在留していた期間を除く。

③ 国外転出後5年を経過する日までに帰国をした場合の取扱い
本特例の適用を受けた者が、その国外転出の日から5年を経過する日までに帰国をした場合において、その者が当該国外転出の時において有していた有価証券等又は未決済デリバティブ取引等で当該国外転出の時以後引き続き有していたものについては、本特例による課税を取り消すことができる。
ただし、当該帰国までの間に、当該有価証券等又は未決済デリバティブ取引等に係る所得の計算につきその計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠蔽又は仮装があった場合には、その隠蔽又は仮装があった事実に基づく当該所得については、この限りでない。
この課税の取消しを行う場合には、帰国の日から4月を経過する日までに、更正の請求をしなければならない。

④ 納税猶予
イ 国外転出をする居住者でその国外転出の時において有する有価証券等又は未決済デリバティブ取引等につき本特例の適用を受けたものが、当該国外転出の日の属する年分の確定申告書に納税猶予を受けようとする旨の記載をした場合には、当該国外転出の日の属する年分の所得税のうち本特例により当該有価証券等の譲渡又は未決済デリバティブ取引等の決済があったものとされた所得に係る部分については、当該国外転出の日から5年を経過する日(同日前に帰国をする場合には、同日とその者の帰国の日から4月を経過する日のいずれか早い日)まで、その納税を猶予する。
ロ この納税猶予は、その所得税に係る確定申告書の提出期限までに、納税猶予分の所得税額に相当する担保を供し、かつ、納税管理人の届出をした場合に適用する。
ハ 納税猶予の期限は、申請により国外転出の日から 10 年を経過する日までとすることができる。
この場合における上記③による課税の取消しは、国外転出の日から 10 年を経過する日までに帰国をした場合に適用することができる。
ニ 納税猶予を受けている者は、納税猶予の期限までの各年の 12 月 31 日(基準日)における当該納税猶予に係る有価証券等及び未決済デリバティブ取引等の所有に関する届出書を、基準日の属する年の翌年3月 15 日までに、税務署長に提出しなければならない。
当該届出書を提出期限までに提出しなかった場合には、その提出期限の翌日から4月を経過する日をもって、納税猶予の期限とする。
(注)納税猶予の期限の到来により所得税を納付する場合には、当該納税猶予がされた期間に係る利子税を納付する義務が生じる。以下同じ。

⑤ 納税猶予の期限までに有価証券等の譲渡等があった場合
イ 本特例の適用を受けた者で納税猶予を受けているものが、その納税猶予の期限までに、本特例の対象となった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済等をした場合には、その納税猶予に係る所得税のうち当該譲渡又は決済等があった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等に係る部分については、その譲渡又は決済等があった日から4月を経過する日をもって納税猶予に係る期限とする。
ロ 本特例の適用を受けた者で納税猶予を受けているものが、その納税猶予の期限までに、本特例の対象となった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済等をした場合において、その譲渡に係る譲渡価額又は決済に係る利益の額が国外転出の時に課税が行われた額を下回るとき(決済に係る損失の額にあっては上回るとき)等は、その譲渡又は決済等があった日から4月を経過する日までに、更正の請求をすることにより、その国外転出の日の属する年分の所得税額の減額等をすることができる。

⑥ 納税猶予の期限が到来した場合の取扱い
納税猶予の期限の到来に伴いその納税猶予に係る所得税の納付をする場合において、その期限が到来した日における有価証券等の価額又は未決済デリバティブ取引等の決済による利益の額若しくは損失の額が、本特例の対象となった金額を下回るとき(損失の額にあっては上回るとき)は、その到来の日から4月を経過する日までに、更正の請求をすることにより、その国外転出の日の属する年分の所得税額の減額等をすることができる。
(注)この取扱いは、納税猶予の期限が到来する日前に自ら納税猶予に係る所得税の納付をする場合には、適用しない。

⑦ 二重課税の調整
イ 本特例の適用を受けた者で納税猶予を受けているものが、その納税猶予の期限までに本特例の対象となった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済等をし、その所得に対する外国所得税を納付する場合において、その外国所得税の額の計算上本特例により課された所得税について二重課税が調整されないときは、その外国所得税を納付することとなった日から4月を経過する日までに、更正の請求をすることにより、その者が国外転出の日の属する年において当該外国所得税(納税猶予に係る所得税のうち当該譲渡又は決済等があった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等に係る部分に相当する金額に限る。)を納付するものとみなして、外国税額控除の適用を受けることができる。
(注)有価証券等又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済等による所得が国内源泉所得に該当する等の一定の場合は、上記イの対象外とする。
ロ 居住者が、本特例に相当する外国の法令の規定により外国所得税を課された場合において、その対象となった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済等をしたときは、その者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費に算入する金額は、その外国の法令の規定により収入金額に算入された金額とする。

⑧ 更正の期間制限の取扱い
イ 本特例による所得税(その所得税に係る確定申告書の提出期限までに納税管理人の届出及び税務代理権限証書の提出がある場合として定める一定の場合を除く。)の更正の期間制限を7年(現行5年)とする。
ロ 上記③、⑤ロ、⑥又は⑦イによる更正の請求があった場合の更正については、更正の請求の基因となった理由が生じた日から3年間とする期間制限の特例の対象とする。

⑨ 納税猶予の期限を延長した場合の相続税等の納税義務の取扱い
上記④ハにより納税猶予の期限を延長した者は、相続税又は贈与税の納税義務の判定に際しては、納税猶予がされた期間中は、相続若しくは遺贈又は贈与前5年以内のいずれかの時において国内に住所を有していた場合と同様の取扱いとする。

⑩ 贈与、相続又は遺贈により非居住者に有価証券等が移転する場合
上記②イ及びロに掲げる要件を満たす者の有する有価証券等又は未決済デリバティブ取引等が、贈与、相続又は遺贈により非居住者に移転した場合には、その贈与、相続又は遺贈の時に、その時における価額に相当する金額により、その有価証券等の譲渡又は未決済デリバティブ取引等の決済があったものとみなして、事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算する。

⑪ その他所要の措置を講ずる。
(注1)この特例(上記⑦ロを除く。)は、平成27年7月1日以後に国外転出をする場合又は同日以後の贈与、相続若しくは遺贈について適用する。
(注2)上記⑦ロの特例は、平成 27年7月1日以後に国外転出に相当する事由があった場合等について適用する。

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