先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。 お客様は会社経営をされており、次のことについて悩んでおられました。 (1)自社株の相続税評価額が高すぎる (2)自社株を後継者である長男にどのように引き継がせれば良いのか (3)5年後をメドに社長を退き会長として会社に残る予定をしているが、退職金を支給した方がよいのかどうか お客様が心配されていたことを具体的に示せば、次のことになると思います。 ・相続税の負担が大きい ・自社株を動かすにしても、相続税評価額が高すぎて動かせない ・退職金を払うと手持ち現金が増える、結果所得税と相続税が課税される 【年配の税理士では長男よりも早く死んでしまうので困る】 お客様は、ご自身で会社を創業されました。 創業されて50年くらいになるそうですが、これまで黒字決算を続けてきたのが自慢。 これまで法人税や所得税、そして相続税などの対策は何もされてこなかったそうです。 利益や儲け以上に税金を取られることはないから、税金を素直に払って会社の財務体質を強化することに専念されてきたそうです。 気づけば、長男が次期社長として会社を切り盛りするまでに成長したので、そろそろ引退を考えるようになったそうです。 会社には顧問税理士さんがおられますので、5年後の引退へ向けて相談されたそうです。 ところが、顧問税理士さんからは明確な回答や方針がなかったとのこと。 会社の記帳や決算はしっかりとやってくれているので信頼はしているけれど、相続税に関しては専門家にお願いした方が良いと思われたそうです。 長男はまだ若いので、長男のサポートをしてくれる長男よりも若い税理士を探していたとのことでした。 「年配の税理士では長男よりも早く死んでしまうので困る」と笑い話のような理由で、税理士長嶋にご相談くださいました。 しかし、この笑い話のような理由は笑い話ではなく、とてもマジメなお話です。 実は、このことを理由にご相談くださる方は意外に多いのです。 子供だけではなく孫の世代まで面倒を見てほしい、というご希望を多くいただくのが現実です。 【退職金を支給することは相続税対策として本当に有利なのか?】 自社株対策として退職金を支給することは、最も一般的な方法の一つです。 退職金を支給をすることで、確かに自社株の相続税評価は下がります。 税理士長嶋は、退職金を払うことに全面的に賛成とは言えません。 なぜなら、次のようなマイナス要素があるためです。 ・会社から現金が流出することで、会社の財務体力が低下する。 ・分離課税とはいえ、高額な所得税を払うことになる。 ・退職金として支給した現金は相続財産に含まれるが、その対策をどうするのか? 自社株対策を相続税対策という大きな枠組みの中で考えた場合、むしろ退職金を支給しない方が有利になるケースもあります。 単に机上だけの理論で相続税対策になるから実行する、というのは安易すぎるのではないかと考えます。 自社株対策を相続税対策という大きな枠組みの中の一つとしてとらえ、所得税などへの影響も顧慮し、お客様のご希望を伺いながら、お客様が満足される相続税対策を検討していきたいと思います。 【自社株対策参考ブログ】 ・自社株の相続税対策に限界を感じていませんか? ・自社株の相続税対策に株価引下げが本当に効果があるのか? ・自社株の相続税対策に会社分割をしてはいけない会社がある ・自社株の相続税対策に生前贈与は効果があるのか? ・自社株の相続税対策に持株会社は効果があるのか? ・自社株の相続税対策としての自社株買いにデメリットはないのか? 【相続税対策参考ブログ】 ・自社株の相続税対策に海外持株会社は効果があるのか?(2014/12/16) ・自社株の相続税対策、借金をすることに意味があったのか?(2014/09/05) ・自社株の相続税対策と創業家の財産管理(2014/05/17) ・自社株の相続税対策、持株会社の設立はリスクが高すぎる(2013/11/05) ・自社株の相続税対策、自社株買取りは単なる問題の先送り(2013/06/15) ・自社株の相続税対策は早ければ早いほど効果がある(2013/06/04) ・相続税対策を監査法人に相談したが解決できない(2013/04/26) ・自社株の相続税対策、税理士の自己満足では意味がない(2013/01/04) ・自社株の相続税対策、生前贈与はまったく意味がない(2012/07/25) ・自社株の相続税対策に行き詰まり会社の売却も検討(2012/06/18) ・自社株の相続税対策、会社分割は意味がない(2012/06/01) ・相続税対策に持株会社は意味がない(2012/05/23) ・自社株の相続税対策、相続税専門の税理士では対策できない(2012/03/10) ・相続税専門の税理士が行う自社株対策は意味がない(2011/9/7)