先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。
お客様は医療法人を経営されており、医療法人の相続税対策を検討されたいとのことでした。
また、お客様は資産運用にも興味があるとのことで、知人からの紹介でスイスのプライベートバンクに口座を開設する手続きを進めておられました。
ところが、知人から紹介されたのはスイスのプライベートバンクのバンカーではなくエクスターナルマネージャーと名乗る人物であったため、どこの誰だかわからない人は信用できないとのことで、口座開設の手続きを一時中断されたそうです。
お客様は医療法人の相続税対策と海外での資産運用の両方の相談ができる税理士を探されていたときに、税理士長嶋のホームページをご覧になりご連絡をいただきました。
【スイスのプライベートバンクのエクスターナルマネージャーを紹介された】
お客様からお話を伺うと、今すぐに解決したいことはスイスのプライベートバンクの件とのことでしたので、詳しいお話を伺ったところ次のようなことでした。
・海外での資産運用について知人に相談したところ、スイスのプライベートバンクを勧められた
・知人から紹介されたのはエクスターナルマネージャーと名乗る人物で、プライベートバンカーではなかった
・知人の話では、エクスターナルマネージャーがプライベートバンクの口座を開設するので心配ないとのことだった
・エクスターナルマネージャーの話では、スイスの○○銀行に口座を開くとのことだった
・お客様はスイスのプライベートバンクのプライベートバンカーを紹介されるものと思っていた
・エクスターナルマネージャーと名乗る人物が何者で本当に信用できるのか、そして知人が話していることを信用していいのか不安になった
日本人の感覚として、銀行を紹介してくれるという話になれば、銀行員(プライベートバンカー)を紹介してもらえると思うのは当然のことだと思います。
お客様の目の前に現れたのはプライベートバンカーではなく、エクスターナルマネージャーと名乗る人物。
お客様が戸惑い、不安な気持ちになられたのも十分に理解できます。
まず最初に税理士長嶋からお客様へお話したことは次のことです。
「エクスターナルマネージャーと名乗る人物は、本当にエクスターナルマネージャーなのでしょうか?」
【スイスのプライベートバンクにおけるエクスターナルマネージャーとは?】
お客様とのお話を進める前に、まずはエクスターナルマネージャーとは何か?をお客様にご説明する必要がありました。
エクスターナルマネージャーとは、簡単に言えばプライベートバンクの代理店や口座開設の仲介業者(ブローカー)のことです。
代理店はプライベートバンクが公認しており、ブローカーはプライベートバンクから公認されていない「自称」という違いがあります。
プライベートバンクが公認している代理店は、プライベートバンクの審査をパスしているため、悪質な業者が紛れ込む可能性は低いと思います。
ここで問題となるのはブローカー(口座開設の仲介業者)です。
ブローカーはプライベートバンクから公認されていないのに、プライベートバンクの看板(ブランド)を勝手に利用して顧客を勧誘する人物のことです。
彼らの目的は、口座開設希望者から仲介手数料を受け取ることです。
お客様が知人を通じて紹介されたのはプライベートバンカーではなく、プライベートバンクの代理店あるいはブローカーだったことになります。
【信頼していた知人からブローカーを紹介された】
エクスターナルマネージャーという制度は、すべてのプライベートバンクが採用しているわけではありません。
プライベートバンクにおける顧客対応は、プライベートバンカー自身が直接対応するケースもあれば、代理店に任せるケースもあります。
ここで確認すべきことは、代理店あるいはブローカーが言った「スイスの○○銀行」がエクスターナルマネージャー(代理店)制度を採用しているかどうかという点です。
これを確認すれば、エクスターナルマネージャーと名乗る人物が、本当にエクスターナルマネージャーなのか?を知ることができます。
結論から申し上げると、お客様がお会いになったエクスターナルマネージャーと名乗る人物はブローカーでした。
その人物がブローカーであることがわかった理由は、税理士長嶋が知る限りにおいて、エクスターナルマネージャーと名乗る人物が口座開設を勧めていた「スイスの○○銀行」では、エクスターナルマネージャー(代理店)制度を採用していないためです。
この事実をお客様にお伝えしたところ、お客様は言葉を失い、沈黙の時間が流れました。
信頼していた知人からブローカーを紹介されたことがショックだったのでしょう。
【過去に日本でも悪質なブローカーが存在し、プライベートバンクから警告を受けた】
過去において日本でも、日本人がエクスターナルマネージャーと勝手に名乗り、某プライベートバンクの口座開設を勧誘していたことがあります。
彼らは自身のホームページで某プライベートバンクのロゴマークなどを勝手に使用してエクスターナルマネージャーであることをアピールし、某プライベートバンクのブランドを勝手に利用して営業していたブローカーです。
某プライベートバンクは彼らの存在を非常に嫌いました。
その理由は、某プライベートバンクはエクスターナルマネージャー制度を採用しておらず、プライベートバンカー自身が直接顧客対応をするという方針を取っていたためです。
正規の代理店さえ置かない某プライベートバンクのことですので、ブローカーをより嫌うのは当然のことです。
日本人ブローカーの存在を知った某プライベートバンクは、日本人ブローカーに対してホームページの閉鎖と勝手にエクスターナルマネージャーと名乗らないように警告を出しました。
なぜ、税理士長嶋が日本でこのような出来事があったことを知っているのか?
5年以上前になりますが、税理士長嶋は某プライベートバンクからこの事件があったことを直接聞いていました。
この某プライベートバンクは、お客様がお会いになったブローカーが口座開設を勧めていた「スイスの○○銀行」と同じ銀行だったのです。
【スイスプライベートバンクでの口座開設は詐欺・ネットワークビジネスにご注意】
日本人が海外投資やスイスのプライベートバンクといった世界に足を踏み入れると、悪質な業者に接触する可能性が高く、詐欺やネットワークビジネスと思われる業者も存在していることを十分に理解しなければなりません。
詐欺の見分け方について、2015年6月9日付の税理士長嶋の相続税対策参考ブログ「スイス銀行口座開設、詐欺を見抜く2つのポイント」においてご紹介しています。
また、ネットワークビジネスについて、2015年3月30日付の税理士長嶋の相続税対策参考ブログ「スイス銀行口座開設がネットワークビジネス化している!?」においてご紹介しています。
念のため申し上げますが、税理士長嶋は口座開設の仲介業者(ブローカー)ではありません。
私どもの主要業務は税理士業務とそれに関連するコンサルティングです。
そのため、ブローカーのように仲介手数料でご飯を食べているわけではありませんので、単に口座を開きたいというお問い合わせに対してはお断りしているのが実情です。
税理士長嶋といくつかのプライベートバンクとの間には強固な信頼関係が築かれています。
彼らは私どもを必要とし、私どもも彼らを必要としています。
お互いがお互いを必要としているビジネスパートナーという対等な関係であり、プライベートバンクにおいても税理士長嶋がブローカーのような動きをすることを望んでいません。
【相続税対策参考ブログ】
・スイス銀行(プライベートバンク)口座開設
・スイスプライベートバンク詐欺、時間をかけて信用させる手口(2017/9/18)
・シンガポールプライベートバンク、ジャパンデスク閉鎖で金融難民続出(2017/06/25)
・相続税対策に海外財団法人は本当に効果があるのか?(2017/06/01)
・シンガポールプライベートバンカーの相続税対策に税務上問題あり(2017/05/27)
・スイス銀行、信頼できるプライベートバンカーの見分け方(2015/10/06)
・スイス銀行を使いこなすにはノウハウが必要(2014/12/19)
・相続税を知らない弁護士がプライベートバンク口座開設を斡旋(2014/09/20)
・プライベートバンクに口座開設しても相続税対策になるはずがない(2014/04/19)
・スイスプライベートバンク口座開設、詐欺にご注意(2013/08/12)
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