『週刊ダイヤモンド』2011年10月8日号にて「日本を見捨てる富裕層」という特集が組まれました。
表紙には「資産&家族を賢く海外疎開させる全ノウハウ公開」とあります。
税理士長嶋の個人的な感想は、一言で次のようなものになります。
『記事を読み「勉強になった」と思う方は日本を見捨てない方が良い。残念ながら、記事の内容は富裕層のみなさまにはまったく参考にならず、的外れなノウハウしか公開されていません。』
税理士長嶋は何を言いたいのかと申しますと、執筆されている方や文中でコメントをされている方がそもそも富裕層の方を顧客に持ちお仕事をされていないのではないかと感じられるのです。
記事の構成は、
(1)流出し始めた富裕層
(2)富裕層の資産運用
(3)海外に移住
の3つとなっておりますが、特に資産運用や相続税対策の記事に関してそのように強く感じます。
【日本のプライベートバンキングの問題点を理解していない】
「日本を見捨てる富裕層」という特集の核心をつくテーマとして「流出し始めた富裕層」が冒頭で語られています。
ジャパンリスクを指摘し富裕層の行動を探っており、このような行動をされている方がおられるのも事実です。
ところが、次のテーマの「資産運用」になりますと資産運用初心者向けの記事に大きく内容が変わります。
・メガバンクのプライベートバンキング
・日本の証券会社
・外資系の金融機関
など、日本の金融機関のプライベートバンキング部門を念頭に話が進められます。
日本のプライベートバンキングの問題点を明らかにしなければ、富裕層の方に役立つ記事にはなりません。
【富裕層限定の会員制クラブも利用している金融商品】
資産運用の記事の中で、ある金融商品を紹介し「リスクを理解しましょう」と注意喚起をしています。
この「日本を見捨てる富裕層」という特集に多くの情報を提供している「富裕層限定の会員制クラブ」のグループ会社が注意喚起された金融商品を取り扱っているという話を聞いたことがあります。
一方で持ち上げ、一方で注意喚起をするという「ちぐはぐ」な構成になっているように感じます。
各テーマの執筆者や校正者が違うため、記事全体としてバランスを保つことが難しかったのかもしれません。
【相続税対策に海外移住は現実的ではない】
相続税対策の方法として、海外法人を設立し海外移住することが紹介されています。
雑誌やインターネットなど一般に公開される情報や日本の税理士さんの中にも「究極の節税方法は海外に移住すること」であると信じている方が多いことに正直驚きを隠せません。
なぜなら、相続税対策を考える方が海外に移住することは、現実的ではないからです。
税理士長嶋のもとに所得税対策や相続税対策のご相談に訪れる多くの方は、日本で職業をお持ちです。
例えば、会社や医療法人を経営されている方です。
このような方は、そもそも海外に移住できるはずがありません。
・社員を守るため
・家族を守るため
に、会社を経営していかなければなりません。
机上の話と割り切るのであれば海外移住をすることで節税になるのでしょうが、現実問題としてお客様が実行できなければ何も意味がありません。
海外移住をして節税できるような方は、
・経営を他の人に任せている企業オーナー
・投資家
など限られた方になるのではないでしょうか。
【相続税対策参考ブログ】
・海外移住は本当に究極の相続税対策なのか?
・相続税対策を目的とした海外移住が失敗する理由(2012/10/17)
・資産海外移転、海外投資クラブにご注意(2012/10/11)
・資産逃避、日本を見限る個人マネー|日経ビジネス(2012/02/14)
・相続税対策に海外法人の活用でトラブル多発(2012/01/04)
・資産の海外移転を検討する際に注意すべき大きな問題点(2011/11/15)
・相続税の節税対策に海外移住をする必要はない(2011/10/21)
・相続税対策と併せて資産を海外に移転させたい(2011/10/10)
