相続税の増税についての報道が連日なされておりますが、週刊誌でも海外を利用した相続税対策の手法が紹介されるようになってきました。 先日も某週刊誌にて相続税対策に海外法人を活用するスキームが紹介されました。 週刊誌の記事だけを読みますと、簡単に海外法人が設立でき、簡単に相続税対策が行えるような記述がされています。 税理士長嶋個人的に感じることですが、週刊誌の記事は非常に誤解を与えるものであり、またその内容を信頼することは非常に危険だと思います。 何が危険なのかと申しますと、海外法人を設立された日本人の方にトラブルが多発しているからです。 これは、相続税対策のために海外法人を活用されている方だけではなく、海外でビジネスを行うために海外に法人を設立している方にも当てはまることです。 週刊誌で記事を書いている方は、このような実情をご存じではないのではないでしょうか。 なぜなら、注意喚起をする記述が一切ありません。 もし、海外を利用して相続税対策などを行う場合、確かな情報のもとに適切なアドバイスができる専門家にご相談されることをお勧めします。 【相続税対策に海外法人を活用するスキーム】 週刊誌で紹介された海外法人を活用した相続税対策の概要は、次のようなものです。 (1)海外に資産管理会社を設立する (2)日本国内にある財産を、海外法人に移す (3)日本国内の財産は外国法人の株式に置き換わる (4)親子が5年間日本から出国し、その後外国法人の株式を贈与すれば日本の相続税は課税されない この話だけを聞けば、現在の相続税法から考えれば理論的には確かに相続税対策になります。 しかし、理論的には相続税対策になったとしても、現実問題としてこのような相続税対策が簡単に安心して実行できるかどうかは別のお話です。 【日本人がトラブルに巻き込まれている】 日本人が海外旅行先でトラブルに巻き込まれた際、多くの場合は日本語が話せる現地の人間が絡んでいます。 その理由は、日本人が英語などの外国語を話せないので、日本語を話せる人間を信用してしまうことがあると思います。 これは、海外法人の設立についても同じことがいえます。 多くの方は、インターネットで検索をして海外法人を設立する業者を探しています。 その業者が、 ・身元が明るいのか ・信用できるのか などを十分に検討していただきたいと思います。 その業者が信用できることを前提として、その業者が提携している現地の人間も信用できるのかを十分に検討されることをお勧めします。 税理士長嶋の経験則ですが、海外法人を設立する際日本人がトラブルに巻き込まれる最も多い要因として「業者が提携している現地の人間」が絡んでいます。 【良質な情報が少しだけあれば十分】 「資産の海外移転」や「スイスなどのプライベートバンクの口座開設」などの情報収集をしていくと、いろいろな情報に出会うことになります。 ここで注意をしなければならないのは、怪しげな情報を遠ざけるということです。 怪しげな情報ばかりを得ていると、正しい情報を間違った情報だと解釈してしまう可能性があります。 また、間違った情報を正しい情報だと解釈してしまう可能性があります。 これらの情報は、多くは必要ありません。 良質な情報が少しだけあればそれで十分なのではないでしょうか。 【相続税対策参考ブログ】 ・海外法人を利用した相続税対策、国税を甘く見ないほうがいい(2015/01/27) ・相続税対策に設立したシンガポール法人がトラブルで裁判沙汰に(2013/05/22) ・相続税対策に効果がないニュージーランドの家族信託(2013/04/30) ・相続税対策を目的とした海外移住が失敗する理由(2012/10/17) ・資産海外移転、海外投資クラブにご注意(2012/10/11) ・資産逃避、日本を見限る個人マネー|日経ビジネス(2012/02/14) ・資産の海外移転を検討する際に注意すべき大きな問題点(2011/11/15) ・相続税の節税対策に海外移住をする必要はない(2011/10/21) ・日本を見捨てる富裕層、海外へ資産移転が始まった(2011/10/07) ・相続税などの節税対策に海外法人設立は効果があるのか?(2011/9/5)