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2016/09/05
銀行が主導した自社株の相続税対策が国税から否認され訴訟に

自社株の相続税対策に悩む中小企業の経営者に対して銀行主導で行われた相続税対策が国税の税務調査において認められず、国税を相手に訴訟となっているケースが増えているとの報道が産経新聞においてなされました。

銀行が主導した相続税対策で国税が認めなかったのは自社株対策について「持株会社を利用するものですが、この持株会社を利用した相続税対策は日本全国の銀行が日本全国の会社経営者に提案してきました。
報道されているのは中小企業の経営者となっていますが、上場企業のオーナーにも同じ提案がされており、現実に上場企業のオーナーが税理士長嶋に相談されています。

税理士長嶋は以前から持株会社を利用した自社株の相続税対策は意味がないと言い続けてきており、持株会社を利用した相続税対策のご相談があったお客様には、お止めになることを勧めてきました。
その理由は次の2点です。
・会社の財務内容が悪化することがほとんどであり、会社の経営基盤が揺らいでしまう
・相続税対策としても、大がかりなことをする割にはその効果が薄すぎる

詳しくは「自社株の相続税対策に持株会社は効果があるのか?」においてご紹介しています。

ところが、産経新聞の報道において、持株会社を利用する相続税対策は「税務リスク」を抱えてしまうことが明らかとされました。
相続税対策として意味がないだけでなく、税務リスクまで抱えてしまう銀行主導の相続税対策は「素人の浅知恵」と言えるでしょう。

現在、国税を相手に複数の訴訟がなされていますが、もし国税が勝訴することになれば、日本全国の銀行・税理士に対して損害賠償訴訟が起こされることでしょう。
今回の報道はそれほどインパクトがあり、今後の訴訟の動きが注目されます。
もし国税が勝訴した場合、日本全国の銀行・税理士は責任が取れるのでしょうか・・・

 

(産経新聞:2016年8月29日)
自社株の相続めぐり銀行が中小企業経営者へ提案の節税策、国税がNO! 追徴課税などを受け国提訴が相次ぐ…

(一部抜粋)
自社株の相続対策に悩む中小企業の経営者が、取引銀行から提案された別会社へ株を売却するなどの「節税策」を実行したところ、税務署に認められずに課税さ れ、国を相手取った訴訟に発展するケースが増えている。国税当局が租税回避行為とみなして厳格に臨んでいるためだ。専門家は、こうした国の判断を認める判例が出てくれば、節税策を提案する銀行や税理士の責任も問われると指摘する。

 

 

【持株会社が自社株の相続税対策になる理由】
産経新聞の図を基に、持株会社が相続税対策になるストーリーは次の通りです。
・P社は銀行から借り入れをし、社長からA社株を買い取る
・P社の株価は買い取り前のA社株の株価よりも大幅に下がる
・A社株は相続財産ではなくなったため、社長が亡くなった場合に相続税の対象となるのは、株価が大きく下がったP社株式となる

持株会社が自社株の相続税対策になる理由は、中小企業の大半を占める非上場の株式の評価方法を定めた財産評価基本通達において、P社とA社を親子関係にしたり、P社の借金が増えたりすれば株価が下がると定めているためです。

 

 

【銀行が持株会社による相続税対策を主導した理由】
銀行が主導した持株会社を利用した相続税対策は、日本全国どこの銀行でも提案していました。
では、なぜ銀行は持株会社による自社株の相続税対策を主導したのでしょうか。
その理由は、簡単な話で融資ができるためです。

銀行の本業は言うまでもなく資金を融資することです。
2016年2月から始まった日銀のマイナス金利政策により、今となっては賃貸マンション・賃貸アパートの建築資金の需要が旺盛ですが、それ以前の日本経済は長らく低迷しており、銀行が融資を伸ばす市場を開拓するのに苦労した時代でした。
その当時考えだされたのが今回報道された持株会社で、自社株の相続税対策に苦しむ会社の創業家がターゲットとされました。

自社株の相続税対策に苦しむ会社の創業家(上場企業オーナーも含む)がターゲットとされた理由は次の3つです。
・会社の業績が良い
・会社の財務基盤が安定している
・融資をしても返済能力が極めて高い

バブル経済以前の銀行は、成長が期待できる会社には担保が足りなくても融資をしていましたので、日本経済を成長させる一翼を担い、会社にとっての銀行は必要不可欠なパートナーという存在でした。

ところが、バブル経済が崩壊したことで、日本の銀行の立ち位置が変わってしまいました。
バブル経済崩壊後の日本の銀行は金融庁を意識してとても保守的になり、確実に返済できる会社にしか融資をしなくなりました。
返済能力が極めて高い会社、つまり自社株の相続税対策に苦しむ会社の創業家は、銀行にとってはとても都合の良い融資先だったのです。

 

 

【国税が勝訴した場合は、日本全国の銀行・税理士は責任が取れるのか?】
銀行が主導した相続税対策で国税が認めなかった持株会社。
もし国税が勝訴した場合、日本全国の銀行・税理士はどうするつもりなのでしょうか?

一般的な話として、相続税専門と称する税理士のほとんどは銀行・証券会社・生命保険会社・不動産業者と提携し、彼らから仕事をもらっています。
相続税専門と称する税理士のほとんどは、いわば金融機関の下請け業者です。

相続税対策に持株会社を利用することで、銀行は融資の実行による金利収入、生命保険の販売・投資信託の販売といった手数料収入が見込めます。
銀行と提携している下請け税理士としても、コンサル報酬が見込めます。

元請け業者である銀行は税理士ではありませんので、建前として相続税対策のコンサルをすることは税理士法違反となります。
そこで、相続税対策である持株会社の提案を銀行が行い、最終判断は必ず顧客の顧問税理士や銀行が提携している下請け税理士に確認するよう顧客に伝えます。
こうすることで、銀行は責任を税理士に押し付け、何かトラブルがあったとしても銀行は税理士に責任があるとして、自身の非を認めません。

しかしながら、相続税対策の骨組みである持株会社を検討・計画・実行した銀行にまったく責任がないと言えるでしょうか?
常識的な感覚からすれば銀行にも少なからず責任はあると考えるのが妥当でしょう。

この報道で感じられることは、銀行だけが金利収入や手数料収入などの「うまみ」を持っていき、責任だけが税理士に押し付けられる。
もし銀行が主導した相続税対策が失敗に終わる(国税の勝訴)ようなことになれば、容赦なくハシゴを外される下請け業者の税理士が気の毒でなりませんが、自業自得でしょう。

 

 

【持株会社の代わりに一般社団法人を利用しても国税は認めないだろう】
自社株の相続税対策として、持株会社として株式会社ではなく一般社団法人が利用されるという摩訶不思議なことが世間ではなぜか流行しています。
一般社団法人が自社株対策に利用される理由は、一般社団法人には持分がないため、一般社団法人が所有する財産には半永久的に相続税が課税されないというものです。

しかしながら、自社株を所有する「箱」が株式会社なのか一般社団法人なのかの違いだけで本質的な部分は同じであり、一般社団法人を利用しても国税が認めない可能性が表面化することになりました。

一般社団法人を利用した相続税対策について、税務上まったく問題がないと豪語する税理士もいらっしゃるようです。
「税制の問題はない」と豪語する理由の一つとして「一般社団法人についての税制が明確にされていない」ことが挙げられますが、これはあまりにも短絡的でしょう。
税制が明確にされていないのであれば、立法趣旨・学説等から将来の税制を予測するのが税務の専門家である税理士の役割であり、「税制がない」ことを理由に「税制の問題がない」と判断することは税務の専門家である税理士としての存在意義はゼロに等しいだろう。

もしこの訴訟で国税が勝訴した場合、持株会社として一般社団法人を勧めた税理士に対して損害賠償訴訟が起こされる可能性が出てきますが、その税理士は責任を取ることができるのでしょうか?

税理士長嶋は誰よりも先駆けて2014年から一般社団法人を利用した相続税対策の危険性を「一般社団法人を活用した相続税対策は効果があるのか?」にて指摘してきました。

また、一般社団法人に関するご相談があまりにも多いため、一般社団法人を利用した相続税対策の危険性を、一般社団法人の立法趣旨・税務大学校の見解・国税不服審判所の裁決による法的根拠から指摘した「自社株の相続税対策に一般社団法人を活用する危険性」を2016年にご紹介することにしました。

本当に相続税対策に一般社団法人を利用することは問題ないのでしょうか?

 

(2017年11月21日追記)
2017年11月1日に開催された政府税制調査会において「一般社団法人を利用した節税スキームには課税上問題がある」と警鐘が鳴らされ、一般社団法人について税制改正される可能性が出てきました。
・一般社団法人を利用した節税スキームに警鐘、課税上問題あり(2017/11/21)

 

(2017年12月6日追記)
2017年11月30日の日本経済新聞において、一般社団法人を利用した悪質な節税が横行しているとして、平成30年度税制改正において節税策が封じ込められると報じられました。
・一般社団法人節税スキームの税制改正、銀行税理士の責任問題へ(2017/12/06)

 

 

【税理士長嶋が金融機関の下請け業者にならない理由】
この報道が出た後、私どもは複数のメディアから取材を受けました。
記者さんが取材したところによると、銀行・相続税に詳しい税理士から訴訟になっているという情報が取れなかったため、税理士長嶋は何か知っているか?とのことでした。

そこで、税理士長嶋は記者さんに次のようなお話をさせていただきました。
・もし銀行が訴訟を抱えている場合に、正直にメディアに「訴訟を抱えている」とコメントするでしょうか?
・もし相続税に詳しい税理士が訴訟を抱えている場合に、正直にメディアに「訴訟を抱えている」とコメントするでしょうか?
しかも、相続税に詳しい税理士は銀行にベッタリの人がほとんどですので、銀行のイメージがマイナスになるようなコメントは絶対にしません。

 

なぜ、複数のメディアが私どもに取材依頼をしてきたのでしょうか。
以前から私どもはテレビ・ラジオなどから取材をお受けしており、税理士長嶋がどこの金融機関とも提携していないことをご存じであるためです。

税理士長嶋がどこの金融機関とも提携していない、つまり銀行の下請け業者にならない理由は、お客様に寄り添う立場であるべき税理士がセールス側の銀行と手を取り合うようなことをすれば、お客様の期待には応えられないと考えているためです。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・自社株の相続税対策に銀行から借金をする必要があるのか?(2017/04/06)

・自社株の相続税対策、役員報酬の増額は資金効率が悪すぎる(2016/12/07)

・キーエンス創業家相続税対策に失敗、株式贈与1500億円申告漏れ(2016/09/22)

・持株会社を活用した自社株の相続税対策はうまくいくのか?(2016/08/03)

・オランダなど海外法人節税防止へ、ユニクロ柳井氏どう動く?(2016/07/05)


・相続税対策に持株会社を活用することに限界を感じた(2016/05/18)

・会社経営者の相続税対策が困難を極める3つの理由(2016/04/04)

・自社株の相続税対策に相続時精算課税は意味がない(2015/04/14)

・相続税対策を監査法人に相談したが解決できない(2013/04/26)

・相続税対策に持株会社は意味がない(2012/05/23)


自社株の相続税対策にこんな不満をお持ちではありませんか?