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2017/04/06
自社株の相続税対策に銀行から借金をする必要があるのか?

先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。
お客様は会社経営をされており、自社株の相続税対策について悩まれていました。

自社株の相続税対策について顧問税理士から「相続時精算課税」の提案があったそうで、お客様は「顧問税理士の言うことだから間違いないのだろう」と思っておられました。
ところが、お客様が自社株の相続税対策についてインターネットで調べられていたきに税理士長嶋のホームページをご覧になり、「自社株の相続税対策に相続時精算課税は意味がない」と書かれていたことに驚かれ、ご連絡をいただきました。

 

 

【相続時精算課税による贈与税の支払いのため銀行から借金をする】
お客様から詳しいお話を伺うと次のようなことでした。
・お客様のお父様が30年ほど前に会社を創業された
・3年程前にお客様が社長に就任され、お父様は会長に退いた
・会社の株はお父様が100%所有されているため、お客様には経営権がない
・お客様が会社の経営権を取得するにあたり、会社の株を異動させる必要がある
・顧問税理士から自社株を異動させる方法として相続時精算課税制度の提案を受けた
・自社株の評価は10億円程度であるため、相続時精算課税による贈与税は1億9500万円程度が見込まれる
・お客様には贈与税1億9500万円を払う現金がないため、全額銀行借り入れをして贈与税を払う予定
・銀行借り入れの返済原資は、役員報酬を増額することになっている

お客様のお話を伺った後、税理士長嶋はある疑問を抱きます。
銀行借り入れをしてまで自社株の生前贈与をする必要があるのか?と・・・

また、相続時精算課税による自社株贈与の提案は、顧問税理士自身の考えではないとも感じました。
普通の税理士であれば、顧客に借金させてまで贈与税を払わせるようなことはさせないでしょう。
顧問税理士が銀行に相談した結果、銀行の思惑が入っているのではないか?と思えてなりませんでした。

 

 

【銀行借り入れは本当に払えるのだろうか?】
もし仮にお客様が銀行から借金して贈与税を払う場合、税理士長嶋は次のようなことが心配になります。
(1)銀行借り入れを本当に払うことができるのか
(2)会社の資金繰りに影響はないのか
(3)銀行借り入れが会社の成長を止めてしまうことにならないか

 

(1)銀行借り入れを本当に払うことができるのか
お客様は贈与税の支払いのために約2億円の資金調達が必要な状況で、借金の支払い原資は役員報酬の増額となっています。

例えば、2億円の借金を10年間で返済する場合、単純に元本だけでも年2000万円の返済となります。
お客様は既に所得税最高税率の55%で課税されていますので、銀行借り入れ2000万円を返済しようと思うと、役員報酬を年4000万円増額しなければなりません。
役員報酬年4000万円の増額を10年間続けることが前提ですので、会社の業績が悪くなり役員報酬の増額が続けられない場合、銀行借り入れの返済はどうするのでしょうか?

 

(2)会社の資金繰りに影響はないのか
銀行借り入れを返済するには役員報酬の増額が年4000万円必要、これは会社からキャッシュアウトを意味します。
会社の運転資金の他に余裕資金として年4000万円の現金を確保するには、次のようなことが必要になるでしょう。
・経費4000万円の削減を10年間続ける
・会社の営業利益率が10%であるときは、4億円の売上増を10年間続ける
・会社の営業利益率が5%であるときは、8億円の売上増を10年間続ける

自社株評価が10億円の会社にとって、これらを達成するのは相当難しいのではないでしょうか。
これらが難しい場合、運転資金を取り崩して役員報酬の増額に充てることになりますが、会社の運転資金に問題はないのでしょうか?

 

(3)銀行借り入れが会社の成長を止めてしまうことにならないか
上記(2)のような経営努力によって生じたキャッシュは、通常であれば新規事業や新商品の開発資金、あるいは海外進出や人材採用など会社の成長に資金投入します。
ところが、創業家の相続税対策のためとはいえ、会社のキャッシュが銀行借り入れの返済に回れば、会社の成長が止まることは誰が見ても明らかです。
このような状況が10年間も続けば、同業他社との競争力に大きな差がついてしまいます。

自社株の相続税対策のために銀行借り入れを返済している間に、ビジネスチャンスを得るのは同業他社であることを理解しなければならないだろう。
同業他社は経営努力によって生じたキャッシュを新規事業や新商品の開発資金、あるいは海外進出や人材採用など会社の成長に資金投入を行い発展していきます。
現在のような不安定な経済状況下にあっては、会社の成長が見込めない空白の期間が10年もできてしまうのは致命傷になりかねないでしょう。

 

 

【会社あっての創業家という立ち位置】
会社創業家の相続税対策はバランス感覚が求められるため、非常に難しいです。
会社と創業家は表裏一体の関係、つまり創業家に有利になる相続税対策は会社にとって不利になる対策となり、その逆も同じこととなります。

間違えてはいけないのは、会社あっての創業家という立ち位置です。
会社の経営が傾き自社株評価がゼロになるようなことになれば、創業家の相続税対策は大きな意味を持たなくなります。

会社の財務内容を悪化させてしまう銀行借り入れが本当に自社株対策に必要なのかどうか、冷静になって考えることが必要ではないでしょうか。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・自社株の相続税対策、役員報酬の増額は資金効率が悪すぎる(2016/12/07)

・キーエンス創業家相続税対策に失敗、株式贈与1500億円申告漏れ(2016/09/22)

・銀行が主導した自社株の相続税対策が国税から否認され訴訟に(2016/09/05)

・持株会社を活用した自社株の相続税対策はうまくいくのか?(2016/08/03)

・相続税対策に持株会社を活用することに限界を感じた(2016/05/18)

・自社株の相続税対策に一般社団法人を活用する危険性(2016/01/17)

・自社株の相続税対策に相続時精算課税は意味がない(2015/04/14)

 

 

【自社株対策参考ブログ】
・自社株の相続税対策に限界を感じていませんか?

・自社株の相続税対策に株価引下げが本当に効果があるのか?

・自社株の相続税対策に会社分割をしてはいけない会社がある

・自社株の相続税対策に生前贈与は効果があるのか?

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