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2014/06/01
一般社団法人を活用した相続税対策は効果があるのか?

新しい相続税対策として、一般社団法人を活用することが専門家の間で注目されています。
税理士と司法書士が組み、このようなセミナーが多数開催されていると聞いています。
一般社団法人を活用することで、本当に相続税対策の効果があるのでしょうか。

一般社団法人を活用して相続税対策を行う場合のポイントは、次の2つがあります。
(1)一般社団法人に財産を移したときの課税関係がどうなるのか
(2)一般社団法人に財産を移した後の課税関係がどうなるのか

結論から申し上げると、(1)については現在の税法で課税関係が明確になっているため、さほど問題はありません。
一方、(2)については、現在の税法では課税関係が明確ではありませんので、税務リスクがあることを十分に理解しなければなりません。

相続税対策に一般社団法人を積極的に勧める税理士の中には「税制の問題はない」と豪語する方もおられます。
「税制の問題はない」と豪語する理由の一つとして「一般社団法人についての税制が明確にされていない」ことが挙げられますが、これはあまりにも短絡的でしょう。
税制が明確にされていないのであれば、立法趣旨・学説等から将来の税制を予測するのが税務の専門家である税理士の役割であり、「税制がない」ことを理由に「税制の問題がない」と判断することは税務の専門家である税理士としての存在意義はゼロに等しいだろう。

(2016年1月17日追記)
一般社団法人を活用した相続税対策の危険性について、一般社団法人の立法趣旨・税務大学校の見解・国税不服審判所の裁決から法的根拠により指摘したブログを更新しました。
・自社株の相続税対策に一般社団法人を活用する危険性(2016/01/17)

(2017年11月21日追記)
2017年11月1日に開催された政府税制調査会において「一般社団法人を利用した節税スキームには課税上の問題がある」と警鐘が鳴らされ、一般社団法人について税制改正される可能性が出てきました。
・一般社団法人を利用した節税スキームに警鐘、課税上問題あり(2017/11/21)

(2017年12月6日追記)
2017年11月30日の日本経済新聞において、一般社団法人を利用した悪質な節税が横行しているとして、平成30年度税制改正において節税策が封じ込められると報じられました。
・一般社団法人節税スキームの税制改正、銀行税理士の責任問題へ(2017/12/06)

 

【賃貸不動産を一般社団法人に移すことによる相続税対策】
一般社団法人を活用して相続税対策を行う場合の事例として、賃貸不動産が用いられることが多いようです。
賃貸不動産について、一般社団法人を活用する相続税対策のストーリーは次のようなものです。
(1)賃貸不動産を売却・贈与・遺言などにより、一般社団法人に所有させる
(2)一般社団法人が賃貸不動産を所有したときに、所得税・相続税・贈与税が課税される可能性がある
(3)一般社団法人には株式会社のような出資(持分)に対する財産性が認められていない
(4)一般社団法人の持分に財産性がないため、一般社団法人が所有する財産には相続税が永久的に課税されない

つまり、(2)で一度何らかの税金を払ってしまえば(3)により、一般社団法人が所有する賃貸不動産には永久的に相続税は課税されないというストーリーです。

 

【一般社団法人に財産を移したときの課税関係がどうなるのか】
相続税法66条第4項において、次のように規定されています。
「持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において、その贈与又は遺贈によりその贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、その社団又は財団を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課税する。」

つまり、一般社団法人に財産を移したときに、親族の相続税や贈与税が減少するときは、一般社団法人を個人とみなして、相続税や贈与税が課税されることになります。

一般社団法人を設立して賃貸不動産を所有させますので、一般的にはこれまでと変わらず賃貸不動産を所有していた人やその親族が一般社団法人を支配していくことになるかと思います。
一般社団法人が所有する財産は、実質的にこれまでと同じ人が所有していることになりますので、一般社団法人に財産を移したときに相続税や贈与税が課税されますので、相続税対策の効果はないといえます。

また、賃貸不動産を一般社団法人に売却した場合には、譲渡所得税が課税されることになります。

 

【一般社団法人に財産を移した後の課税関係がどうなるのか】
一般社団法人が相続税対策になるのは賃貸不動産を移した後のことです。
一般社団法人を支配していた人が亡くなったときに、その亡くなった人が所有していた一般社団法人の支配権を相続財産として考えて相続税を課税するということが明確に定められていません。
一般社団法人は引き続きその親族が支配していくことになりますが、この支配権に対して相続税は課税されないのでしょうか。

相続税法基本通達11の2-1に次のような定めがあります。
『相続税法に規定する「財産」とは、金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいうのであるが、財産には、法律上の根拠を有しないものであっても経済的価値が認められているもの、例えば、営業権のようなものが含まれること。』

一般社団法人は持分がないと定められていますが、上記の通達において「法律上の根拠がなくても経済的価値があれば相続税法における相続財産に含まれる」と言っています。
上記通達により、一般社団法人の支配権に相続税が課税されてしまう可能性はゼロではありません。

 

【税法はこのような利用のされ方を想定していなかったのでは】
現在の税法では、一般社団法人に財産を移したときの課税関係は明確に定めています。
ところが、財産を移した後の課税関係を明確に定めていません。

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が平成20年12月1日に施行されましたが、一般社団法人に賃貸不動産を所有させるというようなことを想定していなかったのではないでしょうか。
あるいは、この問題が出てくるのは遠い将来の30年後や50年後ですから、そのときに課税関係を明確にすればよいと考えたのかもしれません。

新しい法律ができると、チャンスとばかりに専門家はいろいろなスキームを考えます。
ところが、その多くは税法が整備されていないため、課税関係が明確ではなく、遠い将来に税制改正の可能性があります。
これを税務リスクといいますが、これを十分に理解する必要があるのではないでしょうか。

相続税対策に一般社団法人を積極的に勧める税理士の中には、税制の問題はないと豪語する方もおられるようです。
あくまでも「現在の税法に限って」の話であることは言うまでもありませんが、上記の通達の課題をクリアすることはできるのでしょうか。
相続税対策は財産を子孫に引き継いでいくことを前提とすることから、30年や50年といった長期間の視点で物事を考えるべきであり、「現在の税法に限って有効である」というような5年や10年といった短期間の視点で物事を考えるべきではないと思います。

私見ですが、将来的に税制が改正されなければ、日本から株式会社は消えてなくなるでしょう。
あるいは、株式会社の株主はすべて一般社団法人になるでしょう。

株式会社の出資に対しては相続税が永久的に課税されるが、一般社団法人に財産を移せばその財産には相続税が永久的に課税されないとなれば、どう考えても不公平感が出てしまいます。
自社株問題で苦しんでいる会社経営者は、当然のことながら後者を選択するでしょう。
一度何らかの税金を払えば、その後相続税で苦しむことが永久的にないのですから。

 

【相続税対策参考ブログ】
・公益財団法人を活用した相続税対策にリスクはないのか?(2017/07/10)

・相続税対策に海外財団法人は本当に効果があるのか?(2017/06/01)

・相続税対策にアパートを建てると本当に節税になるのか?(2016/09/27)

・リフォームによる相続税対策の税制改正をご存じですか?(2015/04/16)

・タワーマンションによる相続税対策が規制されるのは当然だ(2015/12/22)

・日本の相続税対策の根本的な問題点(2011/10/14)

・信託を活用した相続税対策は効果がない(2011/06/20)

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