先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。 お客様は賃貸不動産を多数所有されており、そのほとんどをお客様自身が設立した資産管理会社を通じて所有されているとのことでした。 将来的には資産管理会社の自社株が相続税の対象になることから、自社株の対策が必要であるとお考えでした。 自社株の相続税対策として海外に法人を設立して、その海外法人を持株会社として利用することを検討されていました。 海外に詳しい税理士を探していたところ、税理士長嶋のホームページをご覧になりご連絡をいただきました。 【海外に持株会社を設立しても相続税対策にならない】 お客様から詳しいお話を伺うと、次のようなことでした。 ・賃貸不動産を増やしていく計画なので資産管理会社の相続税対策を今のうちに考えたい ・自社株の相続税対策は海外に持株会社を設立すれば解決できるものと思っていた ・長嶋さんのブログに「海外に持株会社を設立しても相続税対策にならない」と書かれていたために考え込んでしまった お客様が自社株の相続税対策として海外法人を利用することにあたり考え込んでしまったブログはこちらです。 ・自社株の相続税対策に海外持株会社は効果があるのか?(2014/12/16) 結論だけを申し上げると、日本であろうが海外であろうが、法人を使いこなせるノウハウがなければ法人は単なる「箱」に過ぎないということです。 【国税を甘く見ないほうがいい】 海外に持株会社を設立すれば相続税対策になる。 このようにおっしゃる方は、例外なく次のように考えています。 「海外(オフショア)を利用すれば国税にバレないだろう。」 オフショアを利用して自分の財産を隠してしまえば捕獲されないだろうという意図が見え見えなのです。 これは、明らかに節税ではなく脱税を目的とするものです。 このようなご相談があった場合には、税理士長嶋はいつも次のようにお答えしています。 ・オフショアを利用しても国税は調べることができます ・国税を甘く見ないほうが賢明 ・オフショアに財産を隠すという発想は捨てたほうがいい ・相続税対策は合法的に行うべきです 海外法人を利用した失敗事例を一つご紹介します。 2013年10月にアブラハム・プライベートバンク株式会社(以下「アブラハム社」といいます。)が金融庁より行政処分を受けました。 「アブラハム・プライベートバンク株式会社に対する行政処分について」財務省関東財務局(2013年10月11日) アブラハム社は英領ヴァージン諸島に法人を設立し、投資商品の販売手数料をプールしており、次のようなことが明らかとされました。 (1)法人名:Sagacious Trend International Limited (2)株主:MR. Daijiro Takaoka (3)代表者:アブラハム社の関係者 このように、オフショア法人の所有者が誰であるのかが丸裸にされています。 このケースでは、海外法人に投資商品の販売手数料をプールしていたために所得隠しと言われても致し方ない状況です。 これらのことを踏まえると、海外法人に資産管理会社の株を持たせたところで、その結果は推して知るべしでしょう。 アブラハム社といえば、金融資産1億円以上の方が集まる完全会員制のプライベートクラブ「ゆかし」を運営しており、日本の富裕層相手にビジネスを行っている業者の中では最大級の規模を誇ります。 ところが、彼らでさえ海外法人を使いこなせるノウハウを持ち合わせていません。 日本で富裕層相手にビジネスを行っている業者のレベルは、所詮この程度のものです。 【自社株対策参考ブログ】 ・自社株の相続税対策に限界を感じていませんか? ・自社株の相続税対策に株価引下げが本当に効果があるのか? ・自社株の相続税対策に会社分割をしてはいけない会社がある ・自社株の相続税対策に生前贈与は効果があるのか? ・自社株の相続税対策に持株会社は効果があるのか? ・自社株の相続税対策としての自社株買いにデメリットはないのか? 【相続税対策参考ブログ】 ・タックスヘイブンにペーパーカンパニー作り所得隠し11億円(2015/05/12) ・相続税対策と慈善事業のためのオフショア(海外)財団法人(2014/07/04) ・国外財産調書制度対策に海外法人設立は意味がない(2013/07/22) ・相続税対策に設立したシンガポール法人がトラブルで裁判沙汰に(2013/05/22) ・相続税対策に海外法人の活用でトラブル多発(2012/01/04)