バブル時代に流行した相続税対策として、アパート経営があります。 この方法は、バブル時代が終わって20年が過ぎた現在でもなお、効果的な相続税対策として「なぜか」信じられています。 アパート経営をすることで、土地や建物の相続税評価額を下げることができるのは、確かなことです。 単に、相続税を節税する目的だけであれば、アパート経営は有効な方法であることは間違いありません。 しかしながら、土地・建物を不動産としての「資産価値」という視点から着目すると、不動産としての資産価値である「時価」が大きく下がってしまう事例が多いことが現実です。 ところが、この資産価値(時価)を失うリスクがあることについて、なぜ誰も語ろうとはしないのでしょうか。 【アパート経営は相続税対策としてどれくらいの効果があるのか】 バブル時代に流行したアパート経営による相続税対策ですが、具体的にどれくらいの相続税評価額を引き下げる効果があるのでしょうか。 また、相続税はどれくらい節税することができるのでしょうか。 次の事例で検証したいと思います。 (事例) 相続税評価額1億円の土地に、銀行から借り入れをして、建築価額1億円のアパートを建築した場合。 このときの土地の公示価格(時価の目安)は1億2500万円です。 (1)土地の相続税評価額=8000万円 (2)建物の相続税評価額=4000万円 (3)土地・建物の相続税評価額の合計=1億2000万円 さらに、借入金1億円を差し引くと、相続税評価額1億円の土地は2000万円に引き下げることができます。 相続税評価額が8000万円下がりましたので、相続税の税率が50%の方であれば、4000万円の相続税を節税することができます。 【不動産の資産価値(時価)は、いくらで売れるのか】 不動産の資産価値=時価となります。 時価とは、「いくらで売れるのか?」がポイントになってきます。 アパート経営のような賃貸物件の時価は、一般的に「収益還元価格」で評価されます。 賃貸アパートを購入する投資家は、目安として5%~10%の収益率を求めます。 例えば、賃貸アパートの収益が毎年800万円で、投資家が10%の利益率を求めているときの賃貸アパートの資産価値は次のように計算します。 800万円÷10%=8000万円 つまり、8000万円であれば、投資家はこの賃貸アパートを購入するということです。 【価値がない不良資産の相続税評価額が下がるのは当たり前】 相続税対策をせず、土地を更地のまま持っていれば、土地の資産価値は1億2500万円でした。 ところが、相続税対策によりアパートを建築したため、アパートの時価は土地・建物含めて8000万円の価値になってしまいます。 相続税を節税するため、アパート経営をすることで、相続税は確かに4000万円減りました。 しかしながら、4000万円の相続税を節税するために、 (1)土地の資産価値が4500万円下がった (2)アパートの建築資金1億円の借金を背負った ことも事実です。 また、アパートを8000万円で売却しても銀行からの借入金1億円を完済することもできません。 むしろ、相続税対策をせず素直に相続税を払ったほうが、借金を背負うこともありませんので、手許に残る資産は多くなる可能性もあります。 バブル時代の相続税対策の常識であるアパート経営は、相続税評価額を下げることはできますが、それは相続税評価額よりも価値がない不良資産を作った結果のことです。 価値がない不良資産の相続税評価額が下がるのは当たり前のことではないでしょうか。 【相続税対策参考ブログ】 ・相続税対策に不動産の有効活用は本当に効果があったのか? ・相続税対策にアパートを建てると本当に節税になるのか?(2016/09/27) ・相続税対策の相談をなぜ業者にしてしまうのか?(2015/04/28) ・相続税対策のための借金は銀行に上納することを意味する(2014/02/08) ・相続税対策に不動産を活用するのは時代遅れ(2014/01/17) ・相続税対策で作った借金を返済できず自宅が競売に(2013/01/11) ・相続税対策には不動産を購入するしかないのか?(2012/12/26) ・相続税対策にマンション経営で作った借金の資金繰りを改善(2012/10/23) ・相続税対策にマンション経営は失敗だった(2012/05/09) ・相続税対策にアパート経営だけはしたくない(2012/04/23) ・相続税対策に借金をしてはいけない(2011/08/01) ・相続税対策のリスクを、なぜ誰も語ろうとしないのか?(2011/7/22)