バブル時代に流行した相続税対策として「借金をする」という方法があります。 この方法は、バブル時代が終わって20年が過ぎた現在でもなお、効果的な相続税対策として「なぜか」信じられています。 借金をすれば相続税を計算するときに「債務控除」として相続財産から差し引かれるため、相続税対策に有効であると言われています。 ところが、「資産価値」という視点から着目すると財産の資産価値が大きく下がってしまう事例が多いことも現実です。 借金をすることで、財産の資産価値を失うリスクがあることについて、なぜ誰も語ろうとはしないのでしょうか。 【借入金の金利もキャッシュアウトなのに、なぜ相続税だけが悪者になる?】 借金をして相続税対策を行う場合、紐付きで不動産を購入することが定番となっています。 この場合、必ずと言って良いほど、相続税の節税効果だけが強調されます。 借金をすると、もちろん金利の支払いが発生します。 この借入金の金利は相続税と同じくキャッシュアウトするはずなのですが、なぜ相続税だけが悪者になっているのでしょうか? 次のような事例も現実問題として多いのではないでしょうか。 相続税の節税額<借入金の利息の総額 つまり、相続税の節税額よりも借入金の利息の総額が多いケースです。 相続税として税金を払う代わりに、銀行に節税額以上の借金の利息を払っているにすぎません。 結果として、借金などせず相続税を素直に払ったほうが、手許に残る財産は多くなるのではないでしょうか。 【バブル時代は土地の値上がり益で問題が表面化されなかった】 バブル時代であれば、土地の値上がりが期待できました。 そのため、『相続税の節税額<借入金の利息の総額』という状況になったとしても、土地の値上がり益でキャッシュアウトがカバーされたため、このような問題が表面化されませんでした。 ところが、バブル時代崩壊後、 (1)土地の値上がりは期待できず、むしろ土地の資産価値は下落している (2)賃貸物件の過剰供給や設備の老朽化に伴う、空室率の上昇 (3)借入金の利息の支払い負担が大きすぎるため、資金繰りに追われる毎日 となっているアパート経営者は少数ではありません。 【先祖代々の財産を手放した理由は、相続税ではなく借金の利息】 不動産の購入資金を借金するときは、銀行から他に所有する不動産を担保に入れることが求められます。 もちろんのこと、担保が付けられた不動産は簡単には売却できません。 また、相続税を払えない場合、「物納」することもできなくなります。 「相続税のせいで先祖代々の財産を手放した」というようなお話がよくされますが、「相続税が高額だから」という理由ではなく、借入金の利息を払えず担保となっている財産を銀行に取られたというケースも珍しくありません。 むしろ、相続税対策をせず、素直に相続税を払っていたほうが、先祖代々の財産を失うことがなかったかもしれません。 借金をして安全に簡単に利益が出る事業は、とても珍しいと思います。 そのような事業があるとすれば、誰でもやりたいと思うことでしょう。 もし、そのような事業がアパート経営であるとすれば、なぜ簡単に他人に教えるのでしょうか。 何が真実なのかを見極める必要があると思います。 【相続税対策参考ブログ】 ・相続税対策に不動産の有効活用は本当に効果があったのか? ・相続税対策にアパートを建てると本当に節税になるのか?(2016/09/27) ・相続税対策の相談をなぜ業者にしてしまうのか?(2015/04/28) ・相続税対策における賃貸マンションと家賃保証のカラクリ(2014/08/25) ・銀行の手先になっている相続税専門税理士にご注意(2014/07/31) ・相続税対策と称して銀行にいいようにやられた(2014/02/28) ・相続税対策のための借金は銀行に上納することを意味する(2014/02/08) ・相続税対策に不動産を活用するのは時代遅れ(2014/01/17) ・相続税対策で作った借金を返済できず自宅が競売に(2013/01/11) ・相続税対策にマンション経営で作った借金の資金繰りを改善(2012/10/23) ・相続税対策に多額の借金はギャンブルと同じ(2012/09/23) ・相続税対策にマンション経営は失敗だった(2012/05/09)