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2015/04/07
吉本興業創業家、相続財産申告漏れ3億円超

吉本興業創業者一族が相続財産の申告漏れ3億1000万円を指摘され、相続税約9000万円の追徴課税を受けました。
国税は同族会社を利用した経済的合理性のない取引として否認しましたが、これは誰がどう見ても否認されるとわかるような相続税対策ですが、なぜ実行されたのでしょうか。
それなりのご家族であるにもかかわらず、これほど幼稚な相続税対策を止める人が周りにいなかったことがとても不思議でなりません。

(毎日新聞:2015年4月6日)
<吉本興業>創業者一族、申告漏れ 相続分3億1000万円

◇不動産購入などで遺産圧縮 大阪国税局指摘

吉本興業の創業者一族の一人で、2009年に死去した林マサ氏の長男(兵庫県西宮市)が大阪国税局の税務調査を受け、相続財産約3億1000万円の申告漏れを指摘されたことが分かった。

マサ氏が亡くなる直前、同族会社から賃貸マンションを買ったり、借金したりしたのは、遺産を圧縮し相続税を不当に軽くするためで、無効と判断した。
過少申告加算税を含む追徴税額は約9000万円とみられる。

マサ氏は05年に死去した林裕章(ひろあき)前会長の妻。
関係者によると、長男は09年10月にマサ氏が死去した後、全ての遺産を相続した。

マサ氏は亡くなる約4カ月前の09年6月、西宮市の賃貸マンションを約3億7000万円で購入。
マンションを所有し、林家一族が経営する不動産会社から購入費全額を借りたことになっていた。

09年4月ごろには、マサ氏名義の外貨預金約6000万円の贈与を受けた別の同族会社が相当額をマサ氏に貸し付けていた。

相続税を計算する際、不動産の課税評価額は固定資産税評価額などに基づくため、実際の購入価格で計算するより安くなるとされる。
賃貸物件の課税評価額はさらに30%減る。
被相続人が残した借金については相続財産から控除できる。

長男は、相続財産のうち賃貸マンションに関しては約1億2000万円とする一方、マサ氏の借金として約6000万円を全体から差し引いて申告した。

しかし、国税局はマンションの購入について
(1)帳簿上の処理で現金が動いていない
(2)マサ氏の病状が進行した時期の取引
(3)マサ氏の死亡2カ月後に不動産会社が買い戻している
--などと指摘。
相続財産を不当に少なくするためだったとした。

そして、外貨預金の借金とともに相続税法が禁じる「同族会社を使った不合理な取引」に当たり、無効とした。

長男の代理人弁護士は毎日新聞の取材に「現時点では何も話せない」と話した。【向畑泰司】

◇吉本興業
1912(明治45)年、吉本吉兵衛・せい夫婦が創業。せい氏の弟の林正之助元会長が事業を拡大した。
99年には娘のマサ氏の夫の林裕章前会長が社長に就いた。
2007年に週刊誌報道などでマサ氏と吉本興業の確執が伝えられた。
東証1部上場だった吉本興業は10年、株式の公開買い付け(TOB)による非上場化に踏み切り、林家の影響力は低下したとされる。





【国税は相当慎重に税務調査の準備をしたはず】

まず注目すべきは、国税が相当慎重に相続税の税務調査を行ったことです。

相続税の申告期限は2010年8月、そして相続税の税務調査が終了したのは2015年3月末ないし4月初め。
相続税の時効は基本的には5年間と定められており、その期限は2015年8月。
つまり、国税は相続税の時効ギリギリまでの時間を使って相続税の税務調査を終えたことになります。

一般的な相続税の税務調査は、相続税の申告期限から1年ないし2年後に行われることが多いため、国税がどれほど時間をかけてこの税務調査に臨んだのかが読み取れます。

 

【国税局にとって税務調査は失敗が許されない】
なぜ国税はここまで時間をかけて相続税の税務調査を行ったのでしょうか。
次の2点が考えられます。
(1)失敗は許されない
(2)相続税対策を紐解くのに時間をかけた

(1)失敗は許されない
それなりのご家族の相続税の税務調査、しかも国税局が担当する税務調査です。
国税局が担当する税務調査は大口資産家が対象となりますので、有名人の場合は報道されてしまいます。
国税としても、しっかりと追徴課税をしないと示しがつきません。
失敗が許されないご家族の税務調査であったため、確実に追徴するためにより時間をかけたと考えられます。

(2)相続税対策を紐解くのに時間をかけた
被相続人と同族会社との間で複雑なやり取りをしています。
・マンション購入資金を同族会社から借り入れ
・外貨預金を同族会社に贈与
・外貨預金を贈与された同族会社以外の同族会社から被相続人に貸付けを行っている

法人税・相続税・贈与税が絡み合うやり取りであるため、これらの関係を紐解くのに時間をかけた可能性があります。
また、税務調査をより確実なものにするため、被相続人の相続開始前の容態まで調べているはずです。

 

【相続税を逃れるためだけの相続税対策は認められない】
上記のように、国税は相続税対策として行われた一連の取引を認めませんでした。
その理由が「同族会社を利用した経済的合理性のない取引」です。

簡単に言えば、これら一連の取引は世間一般常識的に考えて筋が通らないために認められなかったのです。
・マンション購入資金を借り入れる理由は何だったのか?
・外貨預金を贈与する理由は何だったのか?
・同族会社から資金を借り入れた理由は何だったのか?

一連の取引は相続税を逃れるためだけに行われたものであり、相続がなければこのような取引は行われなかっただろう。
これが「経済的合理性のない取引」と認定された理由となります。

このケースで学ぶべきことは、相続税法上の形式的な要件を整えたとしても国税は否認をしてくるということです。
また、次の点に注意すべきでしょう。
・小手先のテクニックは通用しない
・相続直前の相続税対策は否認される可能性が高くなる
・相続税対策は元気なうちから事前に対応しておくべき

 

【相続税対策参考ブログ】
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