先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。 お客様は貸家を複数お持ちでしたが、築年数も古くなり空屋が目立つようになってきたとのことでした。 そこで、銀行に相談したところ不動産業者を紹介されたそうです。 銀行からは次のような提案があったそうです。 ・賃貸マンションを建てましょう ・相続税対策になるのでローンをしましょう 本当にローンをすることが良いのかどうか悩まれているときに、税理士長嶋のホームページをご覧になり連絡をいただきました。 【一室でも空室になれば現金収支はマイナスになる試算結果】 お客様の貸家がある地域は閑静な住宅街であるため、低層住宅しか建てられない規制がかかっていました。 そのため、賃貸マンションを建てても2階建てにしかならず、戸数は当然のことながら少なくなってしまいます。 満室であることを前提として、銀行は次の試算結果をお客様に提示されました。 ・毎月のローン返済は問題ない ・毎月のローン返済後、手許には生活費の足しにできる程度の現金が残る お客様から詳しいお話を伺う中で、税理士長嶋はある違和感を覚えました。 「一室でも空室が出たとすれば、現金収支はマイナスになってしまうのではないか?」 このことをお客様にお伝えすると、お客様も十分にご理解されていました。 このように、誰かが試算した数字を基に検討するときは、試算の前提条件を必ず確認することが大切です。 【お客様は相続税対策に対してどのような考えをされているのか】 そもそも、お客様は相続税対策についてどのようにお考えなのかを質問してみました。 すると、お客様は次のようにお考えでした。 ・預貯金や不動産のような財産の構成比を考えてみると、不動産の比率が大きすぎる ・不動産を減らして身軽になりたいと思っている ・不動産のように毎月定期的に収入が入ってくることは生活に安心感がある ・ローンをして賃貸マンションを建てると、子供たちがローンを背負うことになるのは好ましくない このようなことを整理してみると、お客様は不動産を活用することにあまり前向きではないことがわかりました。 【相続税対策として「何もしない」という結論もある】 お客様からいろいろなお話を伺う中で、税理士長嶋の考えをお伝えしました。 すると、お客様は次のようにおっしゃいました。 「相続税対策として、何もやらないほうがいいのかもしれません」 相続税対策となれば、賃貸マンション建設や生命保険に加入するなど、何らかの方法論が議論されがちです。 そのため、相続税対策をするためには「何かをしなければならない」という先入観や思い込み、あるいは決めつけのようなものが存在しています。 お客様の価値観を考えてみると、むしろ、何もやらないことこそが相続税対策になるという結論に至りました。 銀行や不動産業者、そして生命保険会社に相談してもこの結論が導き出されることはないでしょう。 彼らは、 ・ローンを組んでもらう ・賃貸マンションを建ててもらう ・生命保険に加入してもらう ことで、ご飯を食べている人たちです。 つまり、彼らは物を売っている人たち(セールス)であるため、自分の仕事になる話しかしません。 当然のことながら「何もしない」という結論では、彼らはご飯を食べることができません。 相続税対策を誰かに相談する場合、相談した相手が「誰の・何を」見ているのかが重要になると思います。 ・相談を受けた人が、お客様の財布の中(節税)を一番に考えているのか ・相談を受けた人が、自身の財布の中(給料やボーナス)を一番に考えているのか 【相続税対策参考ブログ】 ・相続税対策に不動産の有効活用は、本当に効果があったのか? ・相続税対策にアパートを建てると本当に節税になるのか?(2016/09/27) ・相続税対策の相談をなぜ業者にしてしまうのか?(2015/04/28) ・医療法人の相続税対策と海外銀行の資金管理運用(2015/02/25) ・相続税対策における賃貸マンションと家賃保証のカラクリ(2014/08/25) ・銀行の手先になっている相続税専門税理士にご注意(2014/07/31) ・相続税対策に生命保険を活用することは目的ではなく手段(2014/06/06) ・相続税対策を手段ではなく目的にすると失敗する(2013/11/22) ・自社株売却後の相続税対策(2013/10/09) ・相続税対策にもファーストクラスとエコノミークラスがある(2013/08/20) ・相続税対策の税制改正リスク(2013/06/01) ・日本の相続税対策の根本的な問題点(2011/10/14)