先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。
詳しいお話を伺うと、顧問税理士さんの指導により考えられる相続税対策はこれまですべて行ってきたとのことでした。
ところが、お客様は心配を抱えておられました。
考えられる方法はすべて実行したのに、なぜお客様は心配されているのでしょうか。
その理由は「税制改正のリスク」でした。
確かに現在の税法では相続税対策になっているかもしれませんが、税制が改正されればまったく意味がなくなることを心配されていました。
そんなとき、税理士長嶋のホームページをご覧になりご連絡をいただきました。
【税制が改正されるたびに相続税対策を再検討】
お客様は以前から顧問税理士さんの指導のもと、相続税対策を行ってきたそうです。
・生命保険の活用
・不動産の有効活用
・養子縁組の活用
などです。
相続税対策は、その対策を検討し具体的に実行するときの相続税法に定められている項目について、現状よりも有利になるという結論が導き出されることから、その対策を実行することになります。
相続税対策を実行する大前提として、現在の相続税法を基準に判断することになります。
近年、相続税の節税方法が封じられる税制改正が続いています。
・生命保険の定期金の評価
・小規模宅地の適用条件
などです。
税制が改正されてしまえば、これまで節税になると考えていた効果は期待できなくなるのは当然のことです。
そのため、税制が改正されるたびに対応策を考えることについて、お客様は次のようにおっしゃいました。
「もう、疲れた。」
【生前贈与の方がまだマシだが効果が期待できない】
税制改正リスクを考えるお客様については、生前贈与をしたほうがまだ安心できます。
その理由は、生前贈与は贈与をしたときの税法だけを見ればよく、贈与税の支払いも今すぐに完結してしまうため、税制改正リスクは存在しません。
ところが、相続税対策の場合は、実際に相続があってはじめて相続税が課税されるため、相続があるのが10年後なのか20年後なのかは誰にもわかりません。
また、10年後や20年後の税制は誰にもわかりませんので、ここに税制改正リスクが存在することになります。
お客様の場合、生前贈与を実行したところで常に最高税率で相続税が課税されてしまいますので、生前贈与を実行したところで「焼け石に水」となります。
やらないよりはやったほうが良いのでしょうが、労力に見合う効果は期待できないため、より根本的な解決方法を検討する必要があります。
【日本の相続税対策は常に税制改正リスクを抱えている】
日本の相続税対策の歴史を紐解くと、日本で相続税対策を主導してきたのは銀行・不動産会社・生命保険会社などの民間企業であることは明らかであり、30年前から何一つ変わりません。
彼らは税法の抜け道となるような売れる商品を開発し販売しますので、日本政府はそれを封じ込めようと税制を改正するのは当然の結果です。
これが税制改正リスクの存在する原因の一つとなっています。
一方、富裕層の歴史がある諸外国では、政府が主導して国民に必要な相続税対策の法律を整備していますので、日本とはまったく異なる状況となります。
詳しくは2011年10月14日付けの相続税対策ブログ「日本の相続税対策の根本的な問題点」にてご紹介しています。
【相続税対策参考ブログ】
・考えられる相続税対策をやりつくしたが節税効果がない(2015/08/31)
・医療法人の相続税対策と海外銀行の資金管理運用(2015/02/25)
・相続税対策と称して銀行にいいようにやられた(2014/02/28)
・自社株売却後の相続税対策(2013/10/09)
・相続税対策にもファーストクラスとエコノミークラスがある(2013/08/20)
・相続税対策に「何もしない」という結論もある(2013/07/10)