先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。 お客様はその地域の名士で、16代目の当主だそうです。 先祖代々の土地を守ってきてはいるが、相続税の支払いのたびにどんどん土地が少なくなってきていることに胸を痛めておられました。 相続税対策のために借金をしてマンションを建てましょう、という不動産業者の営業にウンザリしていたとき、税理士長嶋のホームページをご覧になりご連絡をいただきました。 相続税を節税するのではなく、土地を守るという価値観に共感されたそうです。 【借金をすれば相続税がゼロになると言われた】 不動産業者が行う相続税対策の定番として、借金をさせてマンションを建てさせることです。 最近不動産業者から言われたことは「借金をしてマンションを建てれば相続税がゼロになる」ということだったそうです。 お客様はある疑問を持たれました。 「確かに理論的に相続税はゼロになるが、本当にその方法が良いのか?」 そこで、税理士長嶋は次のことをお客様に質問してみました。 「不動産業者さんからどのような提案があったのでしょうか?」 すると、不動産業者からの提案は次のような内容でした。 (1)資産と同じだけの借金を作れば相続税はゼロになる (2)マンションは一括借上をするので、家賃は保証されている (3)家賃から借金返済などを差し引いた資金繰りは常にプラスになるのでまったく問題ない 【先祖代々の土地を守るのにギャンブルは必要か?】 まずはじめに税理士長嶋が驚いたことは(1)の「資産と同じだけの借金を作れば相続税はゼロになる」ということでした。 例えば、資産総額が20億円だとすると借金を20億円作るという意味になります。 不動業者の話では、お客様の場合土地の担保価値が高いのでローンは通るとのことでした。 (資産20億円-借金20億円=純財産0円)となるため、相続税はかかりません。 確かに理論上は正しいのですが、相続税を払う代わりに銀行にローンの金利を払うことを忘れてはいけません。 このことについて、税理士長嶋の相続税対策ブログ2011年8月1日付けにおいて「相続税対策に借金をしてはいけない」とご紹介をしております。 次に、(2)の「マンションは一括借上をするので、家賃は保証されている」ですが、これには大きな落とし穴があります。 一括借上により保証されるのはあくまでも家賃の支払いを保証するだけで、家賃の金額が保証されるという意味ではありません。 一括借上の家賃は不動産業者に決定権があり、お客様には決定権がありません。 お客様に決定権がない家賃保証という不確実なことを100%信用して、(3)の「家賃から借金返済などを差し引いた資金繰りは常にプラスになるのでまったく問題ない」という計画がその通りに事が進まなければ、借金の金額が大きいだけに最悪すべての土地は借金返済のため売却することになりかねません。 ・計画がうまくいけば相続税を払わなくてよい(ただし、借金の金利は払う) ・計画がうまくいかなければ土地をすべて手放す では、ギャンブルに近いものがあります。 先祖代々の土地を守るのにギャンブル的な要素は必要でしょうか。 そこで、税理士長嶋はお客様に次のことを申し上げました。 「お客様の目的は相続税を減らすことではなく、先祖代々の土地を守ることなのではないでしょうか」 【相続税対策参考ブログ】 ・相続税対策に不動産の有効活用は本当に効果があったのか? ・相続税対策にアパートを建てると本当に節税になるのか?(2016/09/27) ・タワーマンションを利用した相続税対策にリスクはないのか?(2014/09/13) ・相続税対策における賃貸マンションと家賃保証のカラクリ(2014/08/25) ・相続税対策を手段ではなく目的にすると失敗する(2013/11/22) ・相続税対策にマンション経営は40年前の古い時代の発想(2012/08/22) ・不動産の相続税対策、土地を守ることはできないのか?(2012/07/18) ・相続税対策を税理士に相談することに限界を感じた(2012/06/22) ・相続税対策にマンション経営は失敗だった(2012/5/9) ・日本の相続税対策の根本的な問題点(2011/10/14)