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2017/03/11
タックスヘイブン子会社を利用した知財の節税を防止へ

財務省は特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンの子会社に移すことによる国際的な節税を防止するため、2018年度の税制改正に織り込む予定です。

特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンの子会社に移すことによる節税は大昔から行われてきた古典的な手法ですが、この節税策の論点は次の2つにあります。
(1)特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンに移す時
(2)特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンに移した後

 

(2)については、2017年度税制改正において導入が予定されており、節税が封じ込められる見込みです。

2018年度の税制改正において(1)の節税を封じ込めることになりました。
特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンの子会社に移すことによる節税策は完全に封じ込められることになりました。

ただ、現在検討されている内容には課税の公平性が保たれるのかという課題が残ります。
財務省には節税策の防止だけではなく、課税の公平性を保つことにも期待します。

 

(日本経済新聞:2017/3/10)
知財 過度な節税防止 海外移転後、高収益で再課税
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS09H3T_Z00C17A3MM8000/

財務省は企業が特許権などの知的財産を税金の安い国の子会社に移す節税策を取りにくいようにする。
いまは知的財産を海外に移すときにしか課税できないが、あとで稼ぎが膨らんだ場合に日本から再課税できる仕組みの導入を検討する。
知的財産を低税率の国に移して租税回避をするやり口が国際的な問題になっており、日本企業にも広がる前に先手を打つ。
2018年度税制改正で導入をめざす。
与党も昨年末に検討する方針を示してい…

 

 

【特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンに移す節税とは?】
特許権・商標権などの知的財産をタックスヘイブンの子会社に移す節税とは、特許権・商標権などの権利や利用権をタックスヘイブンの子会社に譲渡し、そのタックスヘイブンの子会社が権利の対価や利用料を得ることをいいます。

特許権・商標権などの知的財産の権利や利用権をタックスヘイブンの子会社に移す方法としては次の4つがあります。
(1)特許などの権利を取得する前の、発明そのものを譲渡する
(2)特許権や商標権などの権利のすべてを譲渡する
(3)特許権や商標権などの権利を国や地域ごとに譲渡する
(4)特許権や商標権などの権利をライセンスとして国や地域ごとに与える

 

例えば(1)のケースでは、日本企業がタックスヘイブンに子会社を設立し、この子会社に発明を譲渡した後、このタックスヘイブン子会社は発明について特許申請を行います。
タックスヘイブン子会社はこの特許を利用する会社を選定し、特許利用のライセンスを取得した会社は、タックスヘイブン子会社にロイヤルティーを支払います。

当然のことながら、特許のライセンスを日本企業に与えることもあります。
もし日本企業が特許のライセンスを取得した場合、日本企業はロイヤルティーの支払いが発生し、日本で経費となります。
また、タックスヘイブン子会社においては、ロイヤルティー収入が発生し、タックスヘイブンにおいて収入となります。

つまり、
・税率の高い日本で経費を発生させれば、日本で節税できる
・税率の低いタックスヘイブンで収入を発生させれば、日本で節税できる
ことになります。

これが日本企業がタックスヘイブンの子会社を利用した節税の実態です。

 

 

【タックスヘイブン子会社における源泉徴収税の課題】
特許の権利になる前の発明や権利となった特許を譲渡、あるいはライセンスを与えることで、タックスヘイブン子会社は権利の対価や使用料、ロイヤルティー収入を得ることになります。

ロイヤルティー収入に対しては、配当金や利子などと同じように、ロイヤルティーが支払われる国において源泉徴収がなされます。

タックスヘイブン子会社がロイヤルティー収入に対して極めて低い税率で課税されたとしても、ロイヤルティーが支払われた段階で30%などの高い税率で源泉徴収がされてしまうとタックスヘイブンを利用する意味がありません。
タックスヘイブン子会社を利用しようとする日本企業はどのような対応を取れば節税をすることができるのでしょうか?

 

 

【オランダやスイスなどに中間持株会社を設立し租税条約を利用する】
日本企業がタックスヘイブン子会社を利用して節税する際の源泉徴収税の課題を解決するには、租税条約を利用することを検討します。
まずはじめに検討されるのが、ロイヤルティー収入に対して優遇税制を設けている国を利用することです。
その代表とされるのがオランダやスイスといった国です。

タックスヘイブンの子会社を使うのではなく、オランダやスイスに中間持株会社のような会社を設立し、この会社に特許などの権利を持たせることで、できる限り源泉徴収税の負担を軽くしようとするものです。
この中間持株会社はロイヤルティー収入だけではなく、配当金や利子などの収入に対する源泉徴収税の負担を軽くすることもできます。
源泉徴収税の負担を軽くする意味において、オランダという場所が非常に重要になってきます。

 

 

【知的財産をタックスヘイブン子会社に移す節税策は封じ込められる】
これまで、日本企業がタックスヘイブン子会社を利用して節税する際に課税関係が生じるのは、次の2つの場合に限られていました。
(1)日本企業が特許などの権利を譲渡したときにおける日本での課税
(2)中間持株会社があるオランダやスイスにおけるロイヤルティー収入に対する課税

 

(1)については、特許取得に要した発明などのコストに近い価格で譲渡されることが多いため、課税されたとしても極めて少額となります。
(2)については、オランダやスイスにおける租税条約により、課税されるのは極めて少額となります。

いずれの場合においても、合法的に極めて少額な課税がなされることがわかります。

このような国際的な節税を防止するため、(1)については2018年度の税制改正に導入されることが決まりました。
また、(2)については、既に2017年度税制改正に織り込まれています。
特許や商標などの知的財産をタックスヘイブンの子会社に移すことによる国際的な節税策は完全に封じ込められることになりました。

 

 

【財務省には課税の公平性を保つことに期待したい】
現時点において2018年度の税制改正において導入が検討されている節税防止策は次のようなものです。
・商業化から5年程度たった時点で海外に移転した知的財産を再評価する
・収益性が商業化前の企業の見積もりよりも20%以上上回った場合は、差額に課税
・日本の親会社の課税額に上乗せする
・課税対象となる知的財産の詳細は今後詰める

収益性が見積もりよりも20%以上上回った場合に日本で課税されることになりそうです。

ただ、ビジネスですから表になることもあれば裏の結果になることもあります。
裏の結果、つまり逆に収益性が見積もりよりも下回った場合には、日本の親会社の課税額から減額されなければ不公平になるでしょう。

節税防止策を検討するのは構いませんが、財務省には課税の公平性を保つことにも期待したいです。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
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