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2016/04/11
パナマ文書、日本企業がタックスヘイブンを使う理由

タックスヘイブンを利用した税逃れとして世界的に注目を集めているパナマ文書について、2016年4月6日の相続税対策ブログ「パナマ文書日本人、セコム創業家が相続税逃れを画策か」にてご紹介をしておりましたが、報道機関から取材依頼もあったことからパナマ文書について掘り下げてご紹介していこうと思います。

パナマ文書が注目されている理由の一つとして、
・タックスヘイブンを使った脱税
・各国首脳の不正蓄財
・誰もが知る有名な大企業の不正
など、映画になっても不思議ではない魅力的なテーマが並んでいることが考えられます。

さらに、パナマ文書には日本人や誰もが知る日本企業がリストアップされているとのことで、日本では新聞やテレビなどの報道ではなくインターネット上で注目されています。
日本で新聞やテレビなどで報道されない理由も後日ご紹介したいと思います。

 

税理士長嶋個人的な感想ですが、残念なことに正しくない情報が広まっていると感じます。
なぜここまで事の本質が歪められてしまっているのか、ある意味怖さを感じます。
事の本質が歪められてしまっている根底にあるのは、ネット上の情報が本当に正しいものかどうかの検証をしないままに先入観や思い込みが独り歩きしていることに尽きるのではないでしょうか。

税理士長嶋がとても違和感を覚えるのは、次の4点です。
(1)「タックスヘイブン=脱税」という前提で議論がスタートしている
(2)タックスヘイブンについて先入観や思い込みだけで発言している人がいる
(3)都合の良い数字・不確かなウワサ・まるで陰謀論のような情報が独り歩きしている
(4)タックスヘイブンに詳しいと思われる日本の税理士・会計士・弁護士などの専門家が誰ひとりとしてマトモな情報発信をしていない

完全に誤解された解釈や言葉が独り歩きしており、この誤解された解釈が現時点で日本における主流派の考え方になっていることについて、今後は慎重になるべきだろう。
私たち日本人も日常生活においてタックスヘイブンを利用していることを忘れてはならない。

 

 

【必ずしも「タックスヘイブン=脱税」ではない】
パナマ文書が語られる際には、必ず「タックスヘイブン」という言葉が使われます。
タックスヘイブンと同じような意味で使われる言葉として「オフショア金融センター」というものがあります。

タックスヘイブンという言葉は「オフショア金融センター」に対して使われることが多いですが、タックスヘイブンという言葉はオフショア金融センターを適切に表現する言葉ではありません。
その理由として次のようなことが挙げられます。
・オフショア金融センターの多くは日本をはじめとする各国と租税条約を結んでいる
・脱税事件に対して、情報交換などの協力をすることになっていること
・銀行の守秘義務を法制度として採用している国は少数であること

参考までに、パナマ文書の舞台となったパナマについて、2016年2月現在において米国・カナダなどとの間で租税情報交換協定が発効済みとなっています。
また、パナマ文書において法人設立の舞台となっている英領バージン諸島については、2014年6月18日に日本との間で租税情報交換協定に署名が行われており、英領バージン諸島はOECDのタックスヘイブンのブラックリストからも外れています。

単に税率が低い・税金が免除されるという理由だけで、オフショア金融センターをすべて「タックスヘイブン」の一言で表現するのは必ずしも適切ではなく、オフショア金融センターとタックスヘイブンを混同していることがそもそもの間違いです。
租税条約を締結し情報交換に応じている国とそうでない国を区別することなく、タックスヘイブンという言葉だけが独り歩きしている点について悪意を感じてしまうのです。

 

 

【日本を代表する企業はなぜオフショア金融センターを使うのか?】
パナマ文書から日本を代表する企業の名前が多数流出しているとのウワサもあります。
次のようなグローバル企業が事業遂行上の必要性からオフショア金融センターを使うことは常識です。
・海運
・航空
・保険
・銀行
・証券

これらの業種であれば日本を代表する企業が事業遂行上の必要性からオフショア金融センターを使うことは何ら不思議ではなく、国際的な企業間競争の観点からはむしろオフショア金融センターを使わないことのほうが問題です。
注目すべきは、税金を減らすことが目的ではないという点です。

日本人の身近な例として、日本の銀行や証券会社で販売されている投資信託もオフショア金融センターを使っていることを忘れてはなりません。
私たち日本人も知らないところでオフショア金融センターの恩恵を受けています。

日本証券業協会が発表している「公募外国投資信託証券の状況」によると、平成27年9月末時点で日本で販売されている外国籍の投資信託の国別シェアは、ルクセンブルグ45.5%、ケイマン諸島42.4%と約90%のシェアがあります。
ルクセンブルグもオフショア金融センター(パナマ文書で言うところのタックスヘイブン)の一つであることを忘れてはなりません。

日本の銀行や証券会社が日本で投資信託を販売するには、日本の金融庁の認可が必要となります。
日本の金融庁が認可した投資信託を私たち日本人は購入しており、結果としてルクセンブルグやケイマン諸島といったオフショア金融センターを通じて投資をしていることになります。

ルクセンブルグやケイマン諸島、つまりタックスヘイブンを私たち日本人も利用していることになりますが、日本の銀行や証券会社を通じて投資信託を購入した私たち日本人も脱税や資金隠しをしていることになるのでしょうか?
あるいは、投資信託の認可をする日本の金融庁が投資信託を通じて私たち日本人に脱税や資金隠しを勧めているのでしょうか?


身近な日常生活においても日本人がオフショア金融センター(タックスヘイブン)を利用している現実があるにもかかわらず、なぜタックスヘイブン=脱税という発想になるのでしょうか。
完全に誤解された解釈や言葉が独り歩きしており、この誤解された解釈が現時点で日本における主流派の考え方になっていることについて、今後は慎重になるべきだろう。

 

ここで明らかなことは、単純にタックスヘイブンを使うことが問題なのではなく、タックスヘイブンの本質的な問題がもっと別のところにあることを理解することでしょう。

(補足)
パナマ文書から日本を代表する企業の名前が多数流出しているとのウワサもありますが、現段階ではあくまでもウワサにしか過ぎません。
パナマ文書に含まれる法人の情報は5月に正式に発表される予定もあるとのことですので、それまでは確かなことは誰にもわかりません。

現段階でパナマ文書から流出したとされる日本を代表する企業の名前は、2013年に発覚したオフショアリークスが出所であるというウワサがあることにも注意が必要でしょう。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・パナマ文書により税務情報交換協定、何も変わらないだろう(2016/05/25)

・パナマ文書による課税逃れ対策強化はオバマ政権のパフォーマンス(2016/05/07)

・パナマ文書で思い出されるAIJ年金資産2000億円消失事件(2016/04/25)

・パナマ文書にアメリカの企業や政治家の名前がない理由(2016/04/20)

・パナマ文書、日本企業は本当に税金逃れをしているのか?(2016/04/19)

・タックスヘイブンにペーパーカンパニー作り所得隠し11億円(2015/05/12)

・海外法人を利用した相続税対策、国税を甘く見ないほうがいい(2015/01/27)

・AIJ年金資産2000億円消失、真実は解明されないだろう(2012/02/27)

 

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