相続税対策専門の税理士が運営する
東京都渋谷区のコンサルティング会社です。

会社案内
代表者プロフィール
メディア出演・制作協力
不動産はご先祖からの預り物
不動産は時代遅れの対策
自社株対策の限界
自社株対策が簡単ではない理由
自社株の株価を引き下げる
自社株の株数を減らす
相続税の納税資金を確保する
医療法人対策の限界
海外移住は幼稚な節税対策
プライベートバンクの世界へ
養子縁組を利用した相続税対策はうまくいくのか?
高額所得者のための 所得税の節税
相続税対策ブログ
相続税対策ブログ

相続税対策ブログ

2016/05/07
パナマ文書による課税逃れ対策強化はオバマ政権のパフォーマンス

パナマ文書によりタックスヘイブンを利用した税金逃れが注目されていますが、アメリカのオバマ大統領はタックスヘイブン対策強化のため法改正を議会に提案しました。

税理士長嶋の私見は、オバマ大統領にとって大統領任期最後の一年であるためにそのパフォーマンスに過ぎず、もしこの法改正を議会が可決しても現状と何も変わりません。
その理由は、現状のアメリカにおいて既にタックスヘイブン対策強化の枠組みは出来上がっているため、重ねて法改正をする必要性がまったくないためです。

 

 

(日本経済新聞:2016年5月6日)
米政府、課税逃れ対策強化の新法案 実質保有者の報告義務付け

【ワシントン=河浪武史】オバマ米政権は5日、タックスヘイブン(租税回避地)を巡るパナマ文書問題を受けて、企業や個人の課税逃れ対策を強化する法改正を米議会に提案した。
匿名性の高いペーパー企業などの実質的な所有者の報告を義務付け、資産隠しやマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐのが柱だ。

オバマ大統領は4月初旬、パナマ文書問題を受けて記者会見で「税逃れは世界的に大問題だ」と対策強化に乗り出す考えを示していた。
4月中旬の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも課税逃れ対策で国際協調すると合意しており、ドイツや英国など欧州各国は、課税逃れに使われやすいファンドや信託の実質所有者の情報を国際的に共有する枠組み作りを提案している。

米政権が議会に提案した法改正案は、米国内で設立されたり事業認可を受けたりした法人が対象で、従わない場合は罰則を科す。
テロ組織など犯罪組織の資金洗浄のほか、資産隠しによる脱税も防ぐ効果があるとしている。
法改正には野党・共和党が多数を握る議会の承認が必要になる。

ルー米財務長官も5日、議会指導部に書簡を送り、オバマ政権が継続的に求めてきた税制改正の承認を求めた。
同政権の税制改正案は、35%と高止まりする連邦法人税率を28%に下げる一方、企業が海外に留保している収益には強制課税する内容だ。
実質的な法人増税になるとして、野党・共和党が反対しており、実現のメドはたっていない。




【アメリカでは既にタックスヘイブン対策は完了している】
この記事の論点は、課税逃れに使われやすい法人の実質所有者の情報を報告させることにあります。
G20においては、ファンドや信託の実質所有者の情報を国際的に共有できるような枠組みを作ろうとするものです。

アメリカにおいては、既にタックスヘイブン対策の枠組みは出来上がっているため、わざわざ法改正をするまでもありません。
では、既に出来上がっているタックスヘイブン対策の枠組みとは何なのか?
それはFATCA(ファトカ、外国口座税務コンプライアンス法)です。

 

 

【FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)とは?】
FATCA(ファトカ、Foreign Account Tax Compliance Act)は外国口座税務コンプライアンス法と呼ばれる「アメリカの税法」です。
アメリカの法人や個人がアメリカの税金を逃れることを防止するもので、アメリカの法人や個人がアメリカ以外の国の金融機関に口座を所有する場合に、各国金融機関は口座情報をアメリカ国税庁(IRS)に報告しなければなりません。

このFATCAはアメリカ以外の金融機関にも適用され、日本においても2014年7月以降、日本の金融機関でアメリカの法人や個人が新規に口座を開設する場合は、アメリカの納税義務者であるかどうかの確認が行われており、この確認に同意しない場合は口座開設することができません。
もしアメリカの納税義務者である場合は、口座開設者の同意のうえ、日本の金融機関からアメリカ国税庁(IRS)に口座情報が報告されます。

ここで一つの疑問が出てくる人もいるのではないでしょうか。
FATCAはアメリカの税法であるのに、なぜアメリカ以外の各国の金融機関も従わないといけないのか?
その理由は、FATCAには非常に厳しい罰則があるため、各国金融機関は罰則を避けるためには強制的に従うしかない立場に追い込まれているのです。

 

 

【タックスヘイブン対策強化案はオバマ大統領最後のパフォーマンス】
アメリカのオバマ大統領が法改正を提案した課税逃れに使われやすい法人は、必ず銀行口座を持ちます。
銀行口座の実質所有者の情報はFATCAによりアメリカ国外の情報は既にアメリカ国税庁(IRS)に集められています。
また、アメリカ国税庁(IRS)は確固たる理由(麻薬・マネーロンダリングなど)があればアメリカ国内の銀行口座の情報を収集することができるため、麻薬・マネーロンダリングなどの不正な資金への対応は現状でも可能となっています。

アメリカ国内の課題は自国の問題であるため、この課題をクリアすることはそれほど難しくはありません。
一方で、アメリカ国外に関しては相手国の主権の問題があり、アメリカ政府独自の判断だけでは課題をクリアすることはできません。

そこでアメリカ政府はFATCAの導入によりアメリカ国外の情報収集も可能になったことから、アメリカ政府としてはタックスヘイブン対策は完了していると言ってもよく、アメリカのオバマ大統領が法改正を提案して議会で可決されたとしても現状と何ら変わりません。
オバマ大統領の任期があと一年であることから、最後のパフォーマンスであると言わざるを得ません。

 

G20の最終的な目標は、アメリカの税法であるFATCAの枠組みを国際ルールとして共有することだと思いますが、これは実現不可能です。
その理由は、このFATCAはアメリカだからこそできる「力技」であり、日本がFATCAと同様の税法を作ったとしても機能しないことは誰の目から見ても明らかです。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・タックスヘイブン子会社を利用した知財の節税を防止へ(2017/03/11)

・パナマ文書により税務情報交換協定、何も変わらないだろう(2016/05/25)

・パナマ文書で思い出されるAIJ年金資産2000億円消失事件(2016/04/25)

・パナマ文書にアメリカの企業や政治家の名前がない理由(2016/04/20)


・パナマ文書、日本企業は本当に税金逃れをしているのか?(2016/04/19)

・パナマ文書、日本企業がタックスヘイブンを使う理由(2016/04/11)


・パナマ文書日本人、セコム創業家が相続税逃れを画策か(2016/04/06)


相続税対策などこんなご不満やご希望をお持ちではありませんか?