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2016/05/25
パナマ文書により税務情報交換協定、何も変わらないだろう

パナマ文書によりタックスヘイブンとして注目を集めているパナマですが、日本との間で税務情報を交換することに合意しました。
これまでパナマは他国との税務情報の交換に一切応じてこなかったため、日本が世界で初めてパナマとの間で税務情報の交換協定を結ぶこととなります。

この報道については次の3つの論点があり、税理士長嶋の私見は次のようなものです。
(1)日本がパナマと税務情報交換協定を結ぶことで税金逃れを防ぐことができるのか?
(私見)現状と何も変わらないため、意味はない。

(2)なぜパナマが税務情報交換協定の最初の相手として日本を選んだのか?
(私見)日本がパナマの国益を損なわない都合の良い相手であるため。

(3)これまでパナマは他国との税務情報交換協定を拒否してきたが、なぜ今になって協定を結ぶことにしたのか?

(私見)OECDのブラックリストに載せられることを回避するため。

 

(日本経済新聞:2016年5月23日)
パナマの監視網作り道半ば 日本、税務情報交換で合意
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS23H3B_T20C16A5EE8000/

財務省は23日、パナマ政府と富裕層の税務情報を交換する協定を結ぶことで実質合意したと発表した。
国税庁は日本人がパナマで持つ預金や証券などの金融口座や金融の取引明細を定期的に取り寄せられる。
パナマの監視網づくりは道半ばで、実効性には課題が多い。

パナマとの協定を結ぶのは日本が初めて。
節税実態を暴露した「パナマ文書」によってパナマ政府へ情報開示の圧力が強まっていた。

情報交換協定を進めてもタックスヘイブン(租税回避地)にあるペーパーカンパニーの実質的な所有者が誰なのか把握は難しい。
日本政府が日本人の情報を取ろうとしても名義と実態が違う恐れもある。

パナマと欧州各国の情報交換の協定は進んでいない。
パナマ政府は情報の秘匿性を売りに世界の富裕層を呼び込んできただけに、「正確に金融情報を把握できる体制なのか疑問が残る」(日本政府関係者)。

26~27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でもタックスヘイブンの監視網づくりは重要なテーマだが、実効性のある対策が打ち出せるかが焦点だ。





【日本がパナマと税務情報交換協定を結んでも何も変わらない】

上記報道によると、日本人がパナマの金融機関に所有している口座情報を国税庁が入手できる、というものです。

常識的に考えて、日本人や日本企業が好んでパナマの金融機関に口座を持つでしょうか?
ビジネスなど何らかの理由があればパナマに口座を持ちますが、特に理由がなければ、政情が安定しており国際的な金融センターとしての地位を築いているスイス・香港・シンガポールなどに口座を持つのではないでしょうか。
ビジネス上の必要性から口座を持つ日本人や日本企業は、そもそも税金逃れの意図がありませんので、既に適正に納税を行い、パナマの子会社の存在を開示しているはずです。

日本とスイス・香港・シンガポールとの間には既に租税条約や租税協定が結ばれています。
・スイス連邦との租税条約を改正する議定書が発効します(平成23年12月1日:財務省)
・中華人民共和国香港特別行政区との租税協定が発効します(平成23年7月15日:財務省)
・(略称) シンガポールとの租税 (所得) 協定(平成6年4月9日署名)

日本人が口座を所有することが多くなる主要な金融センター(スイス・香港・シンガポール)の税務情報の入手は現在でも可能となっています。
日本とパナマとの間での税務情報の交換協定は結ばないよりはマシですが、結んだとしても日本人や日本企業がパナマをあまり利用しないという点において、意味がないでしょう。

 

 

【日本はパナマの国益を損なわない都合の良い相手】
パナマ文書によりタックスヘイブンを利用した税金逃れが暴露されましたが、その多くは次のような欧州各国のメガバンクを経由してのものです。
(1)ドイツ:ドイツ銀行、コメルツ銀行
(2)イギリス:HSBC
(3)フランス:ソシエテ・ジェネラル
(4)スイス:クレディ・スイス、UBS

上記報道にもありますが「パナマと欧州各国の情報交換の協定は進んでいない」そうですが、これは当然のことです。
パナマにとって欧州各国の金融機関はお得意様ですので、彼らを失うことになればパナマの国益が損なわれます。

一方で、パナマ文書にリストアップされた日本人や日本企業は約400程度。
パナマの国益からすると、日本人顧客を失ったとしても大きな影響はないでしょう。

つまり、日本が税務情報交換の協定を結ぶ最初の国に選ばれた理由は、パナマが日本を信頼しているということではなく、都合の良い相手であったと考えられます。

 

 

【パナマが動いた理由はOECDのブラックリストからの回避】
パナマ文書をキッカケとして、パナマをOECDのブラックリストに載せようという動きが国際的に広がっています。
パナマとしてはOECDのブラックリストに載せられてしまうことになれば、国益を損ないます。
そこで、他国との税務情報交換の協定を結ぶことで透明性をアピールし、OECDのブラックリストに載せられることを回避するために、日本との税務情報交換協定を選択したと考えられます。

タックスヘイブンとされる国や地域が他国と税務情報交換協定を結ぶ動きは、平成21年のG20ロンドンサミット以降活発になっています。
平成21年のG20ロンドンサミット首脳声明において、OECD報告書にも言及されましたが、OECDの方針としてOECDのホワイトリストに載るためには、次の2つの基準を満たすことが必要とされています。
・OECD基準の税務情報交換協定を他国と締結すること
・少なくとも12ヶ国との間で税務情報交換協定を結ぶこと

日本はタックスヘイブンの代表格とされるケイマン諸島やバミューダとも税務情報交換協定を結んでいますが、ケイマン諸島とは平成23年、バミューダとは平成22年に締結されており、いずれも平成21年のG20ロンドンサミット以降のことです。
ケイマン諸島やバミューダが他国との税務情報交換協定を結んだ理由は、OECDのブラックリストに載せられることを避けるためであり、パナマも同様の選択をしたと考えられます。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・タックスヘイブン子会社を利用した知財の節税を防止へ(2017/03/11)

・パナマ文書による課税逃れ対策強化はオバマ政権のパフォーマンス(2016/05/07)

・パナマ文書で思い出されるAIJ年金資産2000億円消失事件(2016/04/25)


・パナマ文書にアメリカの企業や政治家の名前がない理由(2016/04/20)

・パナマ文書、日本企業は本当に税金逃れをしているのか?(2016/04/19)

・パナマ文書、日本企業がタックスヘイブンを使う理由(2016/04/11)


・パナマ文書日本人、セコム創業家が相続税逃れを画策か(2016/04/06)

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