相続税対策ブログ
パナマ文書にアメリカの企業や政治家の名前がない理由
タックスヘイブンを利用した税金逃れとして世界的に注目を集めているパナマ文書ですが、パナマ文書が流出したのは「アメリカの陰謀である」というウワサが一部にあります。
税理士長嶋はパナマ文書について報道機関から取材を受けましたが、その際にもこのウワサについてどう思うか?と聞かれました。
そこで、税理士長嶋の私見をご紹介したいと思います。
【パナマ文書の流出がアメリカの陰謀と言われる理由】
パナマ文書が大きく注目されている理由の一つとして、各国首脳がリストアップされていることです。
例えば、次のような方がリストアップされています。
・アイスランド、グンロイグソン首相本人と妻(首相は2016年4月5日に辞任表明)
・イギリス、キャメロン首相の亡父
・ロシア、プーチン大統領の友人
・中国、習近平国家主席の親族
その他にも世界中の資産家がパナマ文書にリストアップされていますが、不思議なことにアメリカの企業や政治家などの名前がほとんどありません。
これが、パナマ文書を流失させたのはアメリカの陰謀であると言われる理由です。
【パナマ文書にアメリカ企業や政治家の名前がリストアップされていない理由】
パナマ文書にアメリカの企業や政治家などの名前がリストアップされていない理由。
それは、アメリカ自身が世界最大のタックスヘイブンの一つであるため、アメリカ企業や政治家はわざわざパナマを使う必要がないためです。
アメリカ自身が世界最大のタックスヘイブンの一つであるとはどのような意味なのか?
デラウェア州を代表として、ラスベガスがあるネバダ州などタックスヘイブンとして利用できるいくつかの州をアメリカ自身が抱えているためです。
ニューヨーク証券取引所で上場している会社の半数以上はデラウェア州の会社法に準拠して設立されているとも言われており、デラウェア州が積極的に利用されています。
デラウェア州が積極的に利用されている理由として、次のことが挙げられます。
・州自身が法人設立に積極的であること
・法人設立が簡単で安価にできること
・日本人などアメリカ非居住者でも法人設立が簡単にできること
・デラウェア州で事業を行っていない企業は、州の法人税が課税されない
・付加価値税や売上税といった税金が課税されない
・投資による所得や利息などについても州税が課税されない
法人設立が簡単で安価にでき、税金面でも非常に優遇されていることがわかります。
つまり、パナマ文書で問題視されているタックスヘイブンを利用したときと同じような効果がアメリカ国内のデラウェア州でも実現できてしまうのです。
ここで想像してみてください。
例えば、日本の沖縄県が税金特区として指定され、沖縄県に所在する法人の所得には税金がかからないとしたら、日本企業はどう思うでしょうか。
日本国内の沖縄県でタックスヘイブンと同じ効果が得られるのであれば、常識的に考えて日本企業は本社所在地を沖縄に移転するでしょう。
そして、わざわざパナマの法律事務所に連絡をして法人を設立するようなことはしないはずです。
これがパナマ文書にアメリカ企業や政治家がリストアップされていない理由一つだと考えます。
【パナマ文書を流出させることでアメリカ自身がタックスヘイブンとして問題視される】
パナマ文書を流出させたのはアメリカ自身なのか?
アメリカ自身がパナマ文書を流出させたとすると、結果としてアメリカ自身が自分で自分の首を締めることになるため、考えにくいだろう。
アメリカ自身がパナマ文書を流出させたとすれば、ロシア・中国などの各国首脳がタックスヘイブンを利用していたことを世界中に暴露させることができたため、確かに陥れることに成功しました。
このことで世界中が「タックスヘイブンはけしからん!」という見方をするようになりました。
また、アメリカ自身がパナマ文書を暴露することで、これまで他のタックスヘイブンに集まっていた資金をアメリカに呼び込めるといった効果も期待できるかもしれません。
ここで一つの疑問があります。
パナマをはじめとしたタックスヘイブンだけがパナマ文書の影響によりダメージを受けて、アメリカ国内のデラウェア州やネバダ州などが無傷でこれまでと同じようにタックスヘイブンとして生き続けられるのかどうかといえば、それは考えにくいことです。
パナマ文書をキッカケにアメリカ自身も何らかの対応を迫られることは明白です。
なぜなら、デラウェア州やネバダ州などタックスヘイブンとして利用できるいくつかの州をアメリカ自身が抱えていることが周知の事実であるためです。
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