タックスヘイブンを利用した税金逃れが発覚したとしてパナマ文書が注目を集めています。 タックスヘイブンを利用している人の多くは自国において適正に納税していますが、一部の人たちはタックスヘイブンを悪用していることも事実です。 タックスヘイブンが悪用される例としては、マネーロンダリング・麻薬・テロなどです。 日本企業や日本人が絡んだタックスヘイブンを舞台とした事例としては、2012年に2000億円の年金資産が消失したAIJ事件が記憶に新しいところではないでしょうか。 このAIJ事件については、2012年2月27日の相続税対策ブログ「AIJ年金資産2000億円消失、真実は解明されないだろう」においてご紹介しています。 (AIJ事件の概要) ・厚生年金基金が将来の年金支払いに備えるため、年金資産の運用をAIJ投資顧問(以下「AIJ社」といいます)に委託していた。 ・AIJ社は年金資産の運用に失敗し、2000億円あった年金資産のほとんどが失われたとして2012年に社会問題となった。 その後、日本の金融当局の調べで次のようなことが明らかとなりました。 ・AIJ社は委託された年金資産をケイマン諸島のファンドで運用していた ・ケイマン諸島のファンドで運用されていた資金は、AIJ社の子会社の香港の銀行口座に移されていた ・香港に移された運用資金は香港から別の場所に移されたが、その運用資金のほとんどは行方不明となっている ・AIJ社の子会社の香港の銀行口座には6億円程度の資金が残されていた (2012年当時の税理士長嶋の私見) ・日本の金融当局は正確な情報を入手できていないだろう ・AIJ事件の真実は解明されないだろう 事件発覚後、AIJ社の関係者は詐欺・金融商品取引法違反容疑で告発され、2016年4月に実刑判決が確定しました。 【本当に運用に失敗して年金資産を溶かしてしまったのか?】 AIJ事件の不思議な点は、単に年金資産を運用するだけなのであれば、ケイマン籍のファンドに投資するだけでよいはずです。 なぜ、運用資金がケイマン諸島から香港に移されたのでしょうか。 また、香港からさらに別の場所へ資金が移されていますが、資金を移す何らかの理由があったのでしょうか。 しかも、香港から移された資金は行方不明となっています。 常識的に考えて、単純に運用に失敗したという説明だけでは誰も納得できないと思います。 本当に運用に失敗して年金資産を溶かしてしまったのか、タックスヘイブンを悪用して財産隠しをした可能性はないのでしょうか。 AIJ事件は関係者が実刑判決を受けましたので一応の決着がつきましたが、その真相は藪の中だと思います。 【相続税対策参考ブログ】 ・パナマ文書により税務情報交換協定、何も変わらないだろう(2016/05/25) ・パナマ文書による課税逃れ対策強化はオバマ政権のパフォーマンス(2016/05/07) ・パナマ文書にアメリカの企業や政治家の名前がない理由(2016/04/20) ・パナマ文書、日本企業は本当に税金逃れをしているのか?(2016/04/19) ・パナマ文書、日本企業がタックスヘイブンを使う理由(2016/04/11) ・パナマ文書日本人、セコム創業家が相続税逃れを画策か(2016/04/06) ・タックスヘイブンにペーパーカンパニー作り所得隠し11億円(2015/05/12) ・海外法人を利用した相続税対策、国税を甘く見ないほうがいい(2015/01/27)