先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。
お客様は医療法人の理事長をされており、相続税対策の悩みを抱えておられました。
相続税対策の他に早急に対応すべき課題として、平成26年から始まる国外財産調書制度(5000万円超の海外財産報告義務)の対策がありました。
お客様はスイスとアメリカに銀行口座をお持ちですので、国外財産調書制度の対象となっていました。
スイスのバンカーに相談しても納得できる回答がなく、顧問の会計士さんに相談しても何もアドバイスがなかったそうです。
どうすれば良いのか悩まれていたときに税理士長嶋のホームページをご覧になり、ご連絡をいただきました。
【スイスのバンカーのアドバイス】
お客様は国外財産調書制度の対策として、まずスイスのバンカーに相談されました。
スイスのバンカーからは次のようなアドバイスがあったそうです。
・アメリカに資金を置いておくのは危険です
・スイスに送金したほうが安全です
お客様は次のことが疑問に感じたそうです。
・アメリカの何が危険なのか
・スイスの何が安全なのか
スイスのバンカーからは明確な回答はなかったそうです。
【アメリカの銀行のアドバイス】
次に、お客様はアメリカの銀行に相談されました。
アメリカの銀行からは次のようなアドバイスがあったそうです。
・資金を動かさずこのままで良いのではないか
もちろん「何もしない」という選択肢もありえますが、現状を変えないこともある意味リスクを取ることになります。
お客様は医療法人の理事長ですので、医療法人には顧問の会計士さんがおられます。
顧問の会計士さんに相談しても何もアドバイスがなかったそうです。
お客様はこの課題についてどのように考えればよいのか、あるいは実行すべきなのか、アドバイスをしてくださる人が周りに誰もいないことを嘆いておられました。
【国外財産調書の対策を当事者である銀行に相談することがそもそも間違い】
お客様のお話を伺った後、税理士長嶋はお客様に次のことをお伝えしました。
「スイスのバンカー・アメリカの銀行ともに当然の回答だと思います」
彼らはお客様の課題を解決するという視点で物事を考えておらず、銀行にとって一番有利になることを考えているのは明らかです。
その理由は、次のようなものになります。
(スイスのバンカーの意図)
・アメリカの資金をスイスに送金させれば、預かり資産が増える。
・預かり資産が増えれば、手数料収入が増える。
(アメリカの銀行の意図)
・預かり資産を失いたくない。
(長嶋の私見)
・スイスが安全という意味は、スイスの銀行守秘性を利用して、国外財産調書を提出しないという意味に聞こえてしまう。
・最も簡単なことは、アメリカの銀行が言うように、現状のまま資金を置いておき、国外財産調書を提出する。
・しかしながら、お客様のご希望としては何らかの対策を行いたいので、何らかの対策を検討するべき。
何らかの対策を検討する場合、その当事者である人間(この場合は銀行)に相談するべきではないでしょう。
その理由は、当事者が保身に走ってしまう(アメリカの銀行)傾向にあること、あるいは、自身の利益獲得に走ってしまう(スイスのバンカー)傾向にあるためです。
本当に何らかの対策を検討するのであれば、利害関係のない第三者に相談するべきだと思います。
【国外財産調書制度の対策に残された時間は3ヶ月】
国外財産調書の提出対象となるのは、平成25年12月31日現在における海外財産が5000万円を超える場合です。
残された時間は3ヶ月あまりとなりました。
国外財産調書制度について何らかの対策をされる場合には、早急に対応されることをお勧めします。
【相続税対策参考ブログ】
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