平成24年度税制改正により、国外財産調書制度が創設されました。
この国外財産調書制度は、国外にある財産が5000万円を超えるときに提出が必要となります。
ここで、財産が国外にあるかどうかをどのように判定するのか、という問題が出てきます。
この判定は、相続税法10条と同じ基準により行われます。
【主な財産の国外にあるかどうかの判定】
(1)不動産
不動産又は不動産の上に存する権利は、その不動産の所在地により判定します。
つまり、日本国外にある不動産を購入すれば、自動的に国外財産調書に記載しなければなりません。
(2)預貯金等
預貯金は、その預貯金が預けられている支店の所在地により判定します。
つまり、外資系金融機関であっても日本支店に開設された預金口座は、国外財産調書に記載する必要はありません。
それが、日本円の口座であろうと米ドルなどの外貨口座であろうと同様です。
一方、日本の銀行であっても日本国外の支店に預金口座を開設しているときは、国外財産調書に記載しなければなりません。
それが、日本円の口座であろうと米ドルなどの外貨口座であろうと同様です。
(3)社債・株式
社債や株式を発行した法人の本店の所在地により判定します。
つまり、日本国内の証券会社から外国法人が発行する社債や株式を購入したときでも、国外財産調書に記載しなければなりません。
(4)国債・地方債
日本国が発行した国債や日本の地方公共団体が発行した地方債は、日本国内にあるもとのされます。
また、外国や外国の地方公共団体が発行する公債は、外国にあるものとされます。
つまり、日本国内の証券会社から外国や外国の自治体が発行する国債や公債を購入したときでも、国外財産調書に記載しなければなりません。
(5)特許権などの権利関係
権利を登録した機関の所在地により判定します。
つまり、日本国内で特許権などの権利に関する研究が行われていたとしても外国で登録がされたときは、国外財産調書に記載しなければなりません。
【金融庁から国財財産の判定についての改正要望】
金融庁は、国外財産の判定について、平成25年度税制改正において改正することを要望しています。
具体的には、上記(3)と(4)を問題視しています。
(3)と(4)が問題になるのは、日本国内の証券会社から購入した社債・株式・国債・公債であっても、国外財産調書に記載しなければならないということです。
国外財産調書制度が創設された趣旨は、国外にある財産の把握が困難であることから、情報を集めることにあります。
ところが、日本国内の証券会社を経由して購入した社債・株式・国債・公債は、日本国内の証券会社を通じて財産の状況を把握することができるはずです。
このような財産までも国外財産調書にて報告を義務付けることは、投資家にとって大きな負担となります。
このような理由から、日本国内の金融機関において管理されている外国有価証券について、国外財産調書に記載すべき財産から除外するように要望しています。
そもそも、相続税法10条は相続税・贈与税を課税するために設けられたものです。
目的が違いますので、合わない部分が出てくるのは当然のことでしょう。
【相続税対策参考ブログ】
・国外財産調書制度の対策期限が迫る(2013/10/04)
・国外財産調書制度、外国籍でも対象になります(2013/09/26)
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