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2014/09/13
タワーマンションを利用した相続税対策にリスクはないのか?

平成27年から相続税の基礎控除が引き下げられることで、不動産を活用した相続税対策に注目が集まっています。
その中で最も注目されているのは、タワーマンションを利用した相続税対策で、絶大な効果があるとして新聞や週刊誌などで紹介されています。
タワーマンションを利用した相続税対策が新聞や雑誌で紹介されるときには、なぜかメリットしか語られていないのが実情です。

税理士長嶋は、個人的に次の2つの違和感を覚えます。
(1)タワーマンションを利用した相続税対策にリスクはないのか?
(2)なぜ、誰もリスクを語ろうとしないのか?

そこで、相続税対策にタワーマンションを利用した場合のリスクをあえて語ろうと思います。

結論から申し上げると、税務リスクが存在するために、タワーマンションを利用した相続税対策は確実なものとはいえません。
タワーマンションを利用した相続税対策は最近になり開発されたものではなく、以前から知っている人だけが粛々と事を進めていました。

最近になり相続の専門家と称する人たちによりタワーマンションの有効性が暴露される形になりましたので、以前から対策を実行されていた方々にとっては「いい迷惑」な話です。
ここまで世の中に知れ渡ってしまいますと、いずれ節税効果に蓋がされてしまうと考えた方が無難でしょう。
不動産業者や相続コンサルタントと名乗る人たちの話を全面的に信用するのではなく、冷静な判断をされることをお勧めします。

 

【なぜタワーマンションが相続税対策になるのか?】
そもそも、なぜタワーマンションが相続税対策に効果があるのでしょうか。
タワーマンションが相続税対策に利用されるのは、市場価格と相続税評価額との間に大きな乖離があるためです。

マンションの市場価格は、一般的に上層階になればなるほど眺望や日照などがよいため、住居としての価値が上がります。
そのため、間取りや設備が同じ部屋であったとしても、1階と40階を比べると、40階の部屋のほうが分譲価格は高くなります。

ところが、相続税評価額を定めている財産評価基本通達では、マンションは高層階になればなるほど価格が上がるという現実の市場価値をまったく無視しており、1階の部屋だろうが40階の部屋だろうが、相続税評価額は同じになっています。
タワーマンションの上層階の市場価格は1億円であるが、相続税評価額は2000万円であるというような状況も当たり前のようにあります。

このように、マンションの市場価格と相続税評価額との間に大きな開きがあるために、この開きを利用しようというのがタワーマンションによる相続税対策です。

 

【過激な相続税対策が税制改正リスクを生み出す原因となっている】
タワーマンションを利用した相続税対策として、次のような過激なことをされている方がいます。
(1)タワーマンションの高層階を1億円で購入(相続税評価額は2000万円とします)
(2)子供にタワーマンションを相続時精算課税制度により生前贈与をする
(3)相続税評価額が2500万円以下であるため、贈与税はかからない
(4)子供は生前贈与を受けた後、タワーマンションを市場価格の1億円で売却する
(5)子供はタワーマンションを売却しても譲渡所得税はかからない
(6)子供は売却代金の1億円を手にする
(7)所得税・贈与税を払うことなく、親から子供へ現金を贈与したのと同じ効果がある
(8)相続発生時に相続財産に加算されるのは、贈与時の価格である2000万円
(9)親に多額の財産が他になければ、相続税もかからない

国税がこのような過激な相続税対策を見逃すはずがありません。
特に相続税対策が難しいとされる点は、相続税対策を実行した時点と実際に相続がある時点までに、タイムラグがあることです。
この間に、国税は税制改正をすることで節税効果を封じ込めることも可能であるため、相続税対策を実行した意味がなくなる危険性があります。

更に事を複雑にするのは、国税が税制改正という手順を踏まずに、通達により節税効果を封じ込めることができるという点です。
税制改正であれば国会に法案として提出されますので、私たち国民の目に留まりやすいのですが、通達の改正は国税の判断で行われますので、誰も気づかないうちに改正されているという可能性もあります。
つまり、国税は「後出しじゃんけん」をしてきますので、勝てるはずがありません。

このように、タワーマンションは過激な相続税対策となりますが、これを新聞・週刊誌・セミナーなどで勧めている専門家は、自身の顧客の首を絞めている結果になっていることを理解していないのではないでしょうか。
特に、タワーマンションを販売している不動産業者は、マンションを販売すれば手数料が入りますので、その後税制改正されるかどうかは興味のないことなのでしょう。

 

【タワーマンションの相続税評価を市場価格で行うことが求められた事例】
タワーマンションの相続税申告について、財産評価基本通達による相続税評価額ではなく、市場価格で相続税の申告をするようにと国税から指摘された事例があります。
(国税不服審判所:平成23年7月1日裁決)

この事例の概要は次のようなものです。
・平成19年7月、被相続人が入院
・平成19年8月、タワーマンションを2億9300万円で購入
・平成19年9月、被相続人が死亡
・平成19年11月、タワーマンションの名義を相続人に変更
・平成20年7月、相続人がタワーマンションを2億8500万円で売却

相続人は、東京都内のタワーマンション30階部分につき、財産評価基本通達により、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基準に財産評価を行い、土地建物合わせて5800万円として相続税の申告を行った。
ところが、国税は財産評価基本通達で評価した5800万円ではなく、タワーマンションの購入価格である2億9300万円で申告するべきであるとする処分を行った。
結果として、納税者側の主張は棄却されました。

この相続税対策が成功していれば、2億9300万円のものが5800万円で評価できましたので、相続税評価額を2億3500万円圧縮できたことになっていました。
しかしながら、国税不服審判所は次の判断を下し、タワーマンションの購入価格である2億9300万円で申告するべきであるとしました。

(1)実質的な租税負担の平等の実現のため
相続開始日前後の短期間に一時的に財産の所有形態がマンションであるにすぎない財産について実際の価値とは大きく乖離して過少に財産を評価することとなり、納税者間の実質的な租税負担の平等を害することとなる。

(2)財産評価基本通達第6項
財産評価基本通達第6項において、次のように定められています。
「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」

通常の路線価方式ではなく、この規定が適用されるケースであること。

(3)判例(東京地裁平成4年3月11日、東京高裁平成5年1月26日、最高裁平成5年10月28日判決)
相続財産の評価においては、財産評価基本通達の定めにより評価することが原則であるが、それによらないことが相当と認められるような「特別な事情」がある場合には、他の合理的な時価の評価方法により評価することが認められている。

 

【タワーマンションを利用した相続税対策は最近になり開発されたものではない】
この国税不服審判所の裁決は平成23年であり、納税者が相続税対策を実行したのは平成19年です。
つまり、タワーマンションを利用した相続税対策は最近になり開発されたものではなく、以前から知っている人だけが粛々と事を進めていました。

最近になり相続の専門家と称する人たちによりタワーマンションの有効性が暴露される形になりましたので、以前から対策を実行されていた方々にとっては「いい迷惑」な話です。
ここまで世の中に知れ渡ってしまいますと、いずれ節税効果に蓋がされてしまうと考えた方が無難でしょう。
不動産業者や相続コンサルタントと名乗る人たちの話を全面的に信用するのではなく、冷静な判断をされることをお勧めします。

 

【相続税対策参考ブログ】
・不動産の相続税対策に限界を感じていませんか?

・タワーマンションによる相続税対策が規制されるのは当然だ(2015/12/22)

・リフォームによる相続税対策の税制改正をご存じですか?(2015/04/16)

・一般社団法人を活用した相続税対策は効果があるのか?(2014/06/01)

・相続税対策にマンション経営は40年前の古い時代の発想(2012/08/22)

・日本の相続税対策の根本的な問題点(2011/10/14)

・信託を活用した相続税対策は効果がない(2011/06/20)

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