先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。
お客様の叔父がグリーンカードを保有されており、アメリカの信託(トラスト)により財産を託されたとのことでした。
日本の相続税だけでも難しいのに、これにアメリカが絡んでくるとなるとお手上げ状態とのことで、税理士長嶋にご相談くださいました。
【アメリカの信託(トラスト)により財産を託された】
アメリカ在住の叔父には配偶者も子供もいないことから、将来の財産管理をどのようにすればよいか悩んでいたそうで、アメリカの銀行員に相談されたそうです。
アメリカの銀行員の助言は、次のようなものでした。
「財産を誰かに託したほうがいい、そのために遺言書か信託(トラスト)を作成してはどうか。」
アメリカの市民権や永住権を保有している方が遺産相続や相続税の対策を考える場合、遺言書や信託(トラスト)を利用することが一般的です。
グリーンカードを保有している叔父にとっては、アメリカの銀行員の助言は適切だったと思います。
そこで、アメリカの銀行員の助言により、信託(トラスト)を設定したそうです。
最近になり、アメリカ在住の叔父が体調を崩して入院したことから、叔父から相談者であるお客様に次のことが打ち明けられたそうです。
「信託(トラスト)により財産を託したい、私の財産を慈善事業に使ってほしい。」
【アメリカ在住の叔父は相談する相手を間違えた】
・アメリカ在住の叔父の状況
・アメリカの信託(トラスト)の状況
・お客様ご自身の状況
をお伺いしたところ、税理士長嶋の中で一つの結論が導き出されました。
「アメリカ在住の叔父は相談する相手を間違えた可能性が非常に高い。」
最も重要なことは、信託(トラスト)の受益者(お客様)がアメリカの市民権や永住権を持っていないという点です。
お客様が現在把握されていることのみを前提とした一つの結論ではありますが、アメリカの市民権や永住権を保有している人を受益者とする信託(トラスト)であるとしか思えませんでした。
受益者(お客様)が日本人であるため、日本の相続税の視点からは大変不利になる信託(トラスト)契約のような印象を受けました。
お客様は日本人である以上、日本の法律や税法に縛られます。
相続税対策が必要なのであれば、日本の相続税法を考慮すべきなのです。
アメリカの銀行員は、当然のことながらアメリカの法律・税法しか知りません。
アメリカの銀行員の助言が間違っているということではなく、日本の税法を知っている人間に相談しなかったことが大きなミスであったと思います。
もし、現在の信託(トラスト)契約の内容で相続が発生した場合、日本の相続税が最高税率でかかることは間違いありません。
叔父の財産は、日本の相続税が課税されるため、およそ1/2になります。
1/2になった財産を慈善事業に使うことになりますが、叔父の希望を実現できるかどうかは不透明です。
信託(トラスト)契約の内容が明確ではありませんので何とも言えませんが、叔父の希望を実現するためには、信託(トラスト)契約の内容変更、あるいは撤回が必要でしょう。
【相続税対策参考ブログ】
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