相続税が払えず、大阪府の文化財に指定されていた民家「渡辺邸」が文化財指定が解除されることになりました。
日本の税理士(相続税を専門とする税理士も含む)が行う相続税対策が無意味であることが証明されてしまった事例です。
そして、相続税により文化財が消失することになってしまったのは残念でなりません。
(読売新聞:2012年4月27日)
相続税払えず…江戸期民家、府指定文化財を解除
大阪府教委は、江戸時代初期に建てられた府指定文化財の民家「渡辺邸」(大阪市淀川区)について、文化財の指定を解除した。
2010年に相続した所有者が相続税や維持費を払えず、建物の解体と土地の売却を希望しているため。
府教委によると、「渡辺邸」は約2500平方メートルの敷地に母屋のほか、土蔵、納屋などがある。茅(かや)葺(ぶ)きの母屋は江戸時代初めの17世紀前半頃の建築とされ、ほかの建物も江戸時代に整備されたとみられている。
1969年施行の府文化財保護条例では文化財の所有者に保存義務を課しているが、「渡辺邸」は条例制定前の65年に府規則に基づいて指定されていたため保存義務がなかった。
今年2月、所有者が指定解除を申請していた。
府教委は所有者と保存に向けた協議を行ったが、土地価格が5億円以上のため、府による買い上げは困難だったという。
府教委文化財保護課は「相続税を理由にした指定解除は聞いたことがないが、保存の手段がなかった」としている。
【日本の税理士が行う相続税対策はまったく意味がない】
この事例で明らかなことは次の2点です。
・相続税を払うための現金を持ち合わせていない
・その結果、土地を売却することになった
このような結果になってしまったのは、日本で一般的に知られている相続税の節税対策を実行したからではないかと想像します。
相続税を専門とする日本の税理士が相続税対策をしていたとしても同じ結果になっていたことは明らかでしょう。
なぜなら、日本で一般的に知られている相続税対策はまったく意味がないためです。
【日本の相続税対策では相続税の納税資金は確保できない】
相続税を払うための現金を持っていれば、土地を売る必要はありません。
しかし、相続税の納税資金を確保できなかった。
これらが意味することは、日本で一般的に知られている相続税対策では、相続税の納税資金を確保することができないということです。
日本の相続税対策でも、一応「納税資金の確保」をすることが重要であると言われています。
一般的に、次の2つの方法で納税資金が確保できると言われています。
・生命保険の活用
・賃貸アパートなどの経営
この2つの方法には次のような問題点がありますので、期待できる効果はありません。
・生命保険の活用→
生命保険に加入する現金そのものが不足していることがあり、生命保険そのものが使えない場面がある
・賃貸アパートなどの経営→借金をして賃貸アパートを経営するので、
借金返済をしていては手許に現金が残るはずがない
日本の相続税対策の出発点は、バブル時代にニーズがあった相続税の節税でした。
この時代に日本の相続税対策を主導したのは、銀行・不動産・生命保険業界でした。
日本の相続税対策が常に税制改正のリスクを抱えており、現実に税制が改正され節税方法が毎年のように封じられていることはみなさまもご存じの通りです。
このような時代背景から、いつしか相続税対策といえば「節税」ではなく「争族対策」や「納税資金の対策」といった概念に変化を遂げていき現在に至ります。
相続税の節税をすることができなくなったため、相続税対策の概念は業界の都合が良いように解釈されるようになりました。
日本の相続税対策の根本的な問題点を十分に理解すれば、日本で一般的に知られている相続税対策は意味がないことがご理解いただけるかと思います。
【相続税対策参考ブログ】
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