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2017/08/19
マレーシアラブアン島の財団法人は日本の相続税対策になるのか?

先日、相続税対策のご相談があったお客様にお会いしてきました。
お客様は会社経営をされていましたが10年ほど前に会社を売却され、数年前からシンガポールで生活されているとのことでした。
お客様は自身の相続税対策を日本の国際弁護士に相談され、マレーシアのラブアン島に財団法人を設立することを提案されたそうです。

マレーシアのラブアン島に財団法人を作ることが本当に日本の相続税対策になるのか?
お客様は疑問を持たれ、実行することに躊躇されていました。
そんなとき、税理士長嶋のホームページをご覧になり、ご連絡をいただきました。

 

 

【日本の国際弁護士からマレーシアのラブアン島に財団法人の設立を勧められた】
お客様から詳しいお話を伺うと次のようなことでした。
・お客様は数年前からシンガポールで生活されており、日本の非居住者となっている
・お客様のご家族は仕事の関係で日本で生活しており、今後も日本で生活することになる
・お客様に相続があった場合には、日本で相続税が課税される
・日本の相続税も心配だが、海外資産の相続手続きを家族ができるとは思えない
・家族が海外資産を相続した後、家族が適切にその資産を管理運営できるとも思えない
・日本の相続税対策だけではなく、家族が安心して海外資産の管理運営ができるように相続後もサポートしてくれる専門家を探している

 

このようなお客様の背景から、お客様は日本の国際弁護士に相談され、次のような提案を受けたそうです。
・マレーシアにラブアン島という場所があり、このラブアン島はタックスヘイブンである
・ラブアン島はそれほど知られていないタックスヘイブンであるため、今がチャンス
・ラブアン島に財団法人を設立して、海外資産を寄付する
・お客様は財団法人の理事長となり報酬を得て、それをシンガポールでの生活費に充てる
・財団法人に寄付した財産はご家族が自由に使うことができる
・ラブアン島での財団法人の設立は、現地の日本人が対応する

 

ラブアン島だけではなく、海外に財団法人を設立して日本の相続税対策をするという話を持ちかけるのは、日本の国際弁護士・国際税理士・コンサルタントと称する人たちですが、この手の話になると税理士長嶋はいつも失笑してしまいます。
こんな幼稚なスキームで本当に日本の相続税対策ができると本気で思っていることが本当に残念です。
税理士長嶋がこの手の話に失笑する理由は、次の2つです。
(1)日本の国税を甘く見すぎている
(2)出口が不透明

 

 

【ラブアン島がタックスヘイブンであることを知らないのは日本人だけ】
日本の国際弁護士や国際税理士、あるいはコンサルタントと称する人たちがラブアン島を勧める理由の一つとして「ラブアン島はそれほど知られていないタックスヘイブンであるため、今がチャンスである」と必ず言います。
ラブアン島は本当にそれほど知られていないタックスヘイブンなのでしょうか。

2009年に開催されたロンドンサミット(G20)において、OECDからタックスヘイブンのリストが公表され、ブラックリストに指定された国や地域は次の4つでした。
・コスタリカ
・フィリピン
・ウルグアイ
・マレーシア領ラブアン島

マレーシアのラブアン島は2009年時点でタックスヘイブンの中でもブラックリストに指定されており、世界中の誰もが知るブラックなタックスヘイブン地域とされていました。
日本の国際弁護士や国際税理士などが語る「ラブアン島はそれほど知られていないタックスヘイブン」というのは正しくないでしょう。
彼らの名誉のために補足するとすれば、それほど知られていないのは「日本人にだけ」であり、日本人に説明するのであれば彼らの説明は正しいのかもしれません。

参考までに、ラブアン島は2011年時点においてタックスヘイブンのブラックリストから外されています。
過去において世界中の誰もが知るブラックなタックスヘイブン地域であったマレーシアのラブアン島を日本の国税が知らないはずがなく、国税が探し出せないはずがありません。
お客様の日本の国際弁護士は日本の国税の調査能力を甘く見すぎており、国際弁護士と名乗りながらも激動するこの世界情勢をまったく理解できていないように感じます。

 

 

【財団法人に寄付した財産は本当に家族が自由に使えるのか?】
ラブアン島に限らず、海外に財団法人を設立する話になると、日本の国際弁護士や国際税理士などは現地での財団についての法律や制度のみを説明し、それが日本側でどのような取扱いになるのかを語ろうとしません。
彼らが自信を持って語るのは、ラブアン島における財団法人に寄付した財産の取扱いや課税関係、そしてお客様が居住されている国での課税関係(今回のお客様はシンガポール)のみです。

お客様が希望されているのは次の2点です。
・日本の相続税対策になればいい
・相続があった後においても、ご家族が安心して海外資産を管理運営できるようにしたい

つまり、国際弁護士の提案についてお客様が興味を持たれるのは次の2点でしょう。
・ラブアン島の財団法人に財産を寄付をすれば、日本の相続税対策になるのか?
・ラブアン島の財団法人に寄付した財産について、家族が安心して確実に管理運営できるのか?

お客様からすれば、ラブアン島に財団法人を設立しても、日本の相続税対策にならなければ意味がありません。
また、財団に寄付した財産をご家族が自由に使えなければ意味がないのです。

 

 

【ラブアン島に財団法人を設立しても日本の相続税対策にはならないだろう】
一般的な話として、日本国内に財団法人を設立して財産を寄付したとしましょう。
財団法人に寄付された財産を家族が自由に使えるような状況である場合、日本の国税はどのように対応するでしょうか?
一般常識的に考えて、家族に対して贈与税を課税してくるでしょう。

冷静になって考えれば、日本国内の財団法人であるから日本の贈与税が課税され、ラブアン島の財団法人であることを理由に日本の贈与税が課税されない、とはならないはずです。
財団法人に寄付した財産のうち、家族が自由に使った財産について日本の贈与税が課税されるとすれば、まだ家族が使っていない財団法人の財産には日本の相続税が課税される。
あるいは、家族が受益者となった時点ですべての財産に対して贈与税が課税されると考えるのが自然でしょう。
つまり、ラブアン島に設立した財団法人に財産を寄付したとしても、日本の相続税や贈与税の課税対象となるでしょう。

お客様は日本の国際弁護士から次の3点について明確な説明を受けていません。
・ご家族が財団法人に寄付された財産を使った場合に日本での課税関係はどうなるのか
・財団法人に寄付された財産のうち、ご家族が使わなかった財産について、日本での課税関係はどうなるのか
・ご家族が財団法人の受益者となった時点で、すべての財産について日本の贈与税が課税される可能性はないのか

お客様がラブアン島に財団法人を設立することに躊躇されたことは当然のことと税理士長嶋は理解します。

 

 

【ラブアン島の財団法人の管理運営は誰がするのか?】
お客様のご希望には「相続があった後においても、家族が安心して海外資産を管理運営できるようにしたい」というものがあります。

相続後にご家族が海外資産の管理運営をできるのか?が課題ですが、財団法人に財産を寄付すると、財団法人の管理運営は誰がするのか?というテーマに変わります。
お客様が個人で所有している預貯金や有価証券の管理運営でさえ不安であるのに、財団法人の管理運営をご家族ができるとは到底思えません。
むしろ、ハードルを上げてしまうことになると感じます。

お客様は日本の国際弁護士から次の2点について明確な説明を受けていません。
・財団法人の管理運営を誰がするのか
・財団法人に寄付した財産をご家族がいつ・どのようにして自由に使うことができるのか

お客様がラブアン島に財団法人を設立することに躊躇されたことは当然のことと税理士長嶋は理解します。

 

 

【ラブアン島で財団法人を設立するのになぜ現地の日本人の助けが必要なのか?】
日本の国際弁護士・国際税理士・コンサルタントと称する人たちがラブアン島に財団法人の設立を提案する場合、なぜが必ず現地の日本人を入れようとしてきます。
マレーシアのラブアン島の財団法人の話なのに、なぜ日本人を入れる必要があるのでしょうか?
税理士長嶋はいつも疑問を抱きます。

一般的な話として、現地の法制度を利用して何らかのことをするのであれば、現地の法制度に詳しい現地の弁護士なりを雇うはずです。
日本の国際弁護士などが紹介してきた現地の日本人が現地の弁護士資格を保有しているのであればまだ理解できますが、多くの場合はコンサルタントと称する無資格者の日本人です。
日本の国際弁護士・国際税理士・コンサルタントと称する人たちは例外なく「日本人のお客様であるから日本語対応が必要である」と言います。
税理士長嶋は、日本語対応だけがその理由とは到底思えないのです。

税理士長嶋の過去の経験では、海外在住の日本人ほど信用するべきではないと考えます。
もし海外在住の日本人に頼ってしまった場合に、その日本人が何らかの理由により姿を消してしまったとしたら、ラブアン島の財団法人の管理運営を確実に行うことができるのでしょうか?

同様の事例がシンガポールのプライベートバンクで起こりました。
このシンガポールのプライベートバンクで起こったことは、日本人専用窓口であるジャパンデスクが閉鎖状態に追い込まれ、日本語が満足に通じなくなったことで、シンガポールで金融難民となった日本人が溢れています。
この事例について、2017年6月25日付の相続税対策ブログ「シンガポールプライベートバンク、ジャパンデスク閉鎖で金融難民続出」にてご紹介しています。

信用あるシンガポールのプライベートバンクでさえこのようなことが起こりえます、どこの誰だかわからない現地の弁護士資格も持たない無資格者の現地の日本人がどれほど信用できるのか。
弁護士や会計士などの資格保有者は各国監督官庁がありますので一定の品質が保たれていることを期待できますが、コンサルタントと称する無資格者は誰にも管理監督されていませんので、都合が悪くなれば消えてしまう人たちです。
コンサルタントと称する無資格者ほど強い立場であると認識するべきで、ここに現地の日本人リスクが生まれます。

日本の国際弁護士が現地の日本人を使う理由の一つとして、マレーシアのラブアン島の財団法人について詳しくないことが挙げられるでしょう。
現地の日本人が消えた場合、日本の国際弁護士はマレーシアのラブアン島の財団法人の管理運営にあたって、ご家族に適切な助言をすることはできるのでしょうか?

個人が保有する財産や財団法人に寄付した財産を家族が適切に管理運営することができなければ、それはもはや家族の所有物ではありません。
日本の国際弁護士によればラブアン島の財団法人を利用すれば日本の相続税対策になるようですが、日本の相続税対策になったとしても財産をすべて失う可能性があるのであれば、本末転倒です。
財産をすべて失う可能性があるのであれば、まともに相続税を払ったほうがまだマシでしょう。
国も極悪人ではありませんので相続税としてすべての財産を没収するようなことはしません、日本国の場合は最高でも半分です。

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・公益財団法人を活用した相続税対策にリスクはないのか?(2017/07/10)

・相続税対策に海外財団法人は本当に効果があるのか?(2017/06/01)

・自社株の相続税対策に一般社団法人を活用する危険性(2016/01/17)

・一般社団法人を活用した相続税対策は効果があるのか?(2014/06/01)

相続税対策などこんなご不満やご希望をお持ちではありませんか?