スイス大手商業銀行であるUBSは、日本でのプライベートバンキング事業の預かり資産を2015年までに2倍に増やす方針を発表しました。
税理士長嶋個人的な感想ですが、この計画はまず無理だろうと見ています。
(日本経済新聞:2012年2月24日)
UBS、日本の富裕層預かり資産2倍に 15年までに
スイス金融大手のUBSグループは、日本の富裕層向け資産運用サービスで、預かり資産を2015年までに2倍に増やす。
同事業を巡っては、英HSBCが金融資産2億円以上の顧客向けサービスをスイス系のクレディ・スイスに売却。
事実上の撤退を決めており、外資系金融機関の間で集約が進む可能性もある。
UBSは00年以降、スイス以外でも富裕層の資産運用や家業の支援をするプライベートバンキング(PB)事業を展開。
【UBSが日本でのプライベートバンキング事業を拡大する理由】
日本経済新聞の記事によると、UBSが日本でのプライベートバンキング事業を拡大する方針を打ち出した経緯は次のようなことです。
(1)ギリシャの財政問題など欧州債務問題の影響で、主力だった投資銀行事業の成長が見込めない。
(2)プライベートバンキング事業を拡大することで、顧客の企業経営者に対しM&Aや事業承継などの投資銀行サービスを展開。
(3)収益力の回復を目指す。
つまり、伝統的なプライベートバンキング事業により顧客基盤を拡大するのではなく、投資銀行の収益を回復させるためにプライベートバンキング事業を拡大すると読みとれます。
このことは、
UBSが伝統的なプライベートバンキング事業よりも投資銀行事業を重視していることが理解できます。
この報道でわかったことは、UBSにはプライベートバンキング事業を期待してはいけないということではないでしょうか。
また、UBSはプライベートバンクではなく商業銀行であることを十分に理解しなければならないでしょう。
【限られたパイの中でどのようにして預かり資産を増やすのか?】
UBSが発表したのは、あくまでも日本での預かり資産を増やすことです。
日本国内にはメガバンクはもちろんのこと、HSBCのプライベートバンキング事業を買収することにしたUBSと同じスイス系のクレディスイス。
その他、シティバンクやスタンダードチャータードなども富裕層向けの事業を展開しています。
日本国内という限られたパイの中で預かり資産を増やすということは、
他の金融機関から顧客を引き抜くことを意味します。
これを手っ取り早く行うためには、
プライベートバンカーの引き抜きを行うことです。
多くの顧客はバンカーについていきますので、バンカーが動けば自動的に顧客もついてくる。
これがUBSの見立てでしょう。
しかし、バンカーが他の金融機関に移ることでどれだけの顧客がついてくるのかが大きな疑問です。
顧客としては、バンカーの都合に振り回されるだけ。
迷惑以外何ものでもありません。
UBSには金融機関として事業の差別化により、他の金融機関と正面から勝負することを期待します。
【相続税対策参考ブログ】
・スイス銀行(プライベートバンク)口座開設
・UBSの金融資産50億円以上の超富裕層サービスは失敗するだろう(2014/04/02)
・スイス銀行口座開設、日本人プライベートバンカーに注意(2012/01/29)
・HSBCを買収してもクレディスイスに期待できることは何もない(2012/01/17)