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2011/07/16
相続税対策になるのか?配偶者への居住用不動産の生前贈与

相続税対策に活用される生前贈与の一つとして、「配偶者への居住用不動産の贈与」があります。

この「配偶者へ居住用不動産を生前に贈与する」ことは、相続税対策の一つとして良く知られているものです。
この方法は、本当に相続税対策に効果があるのでしょうか?

 

【配偶者への居住用不動産の生前贈与とは?】
次の条件を満たす贈与をしたときは、2000万円までは贈与税を課税しないという特例があります。
これを、「贈与税の配偶者控除例」といいます。

<条件>
(1)婚姻期間が20年以上である配偶者への贈与であること
(2)贈与された財産が、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭であること
(3)贈与された年の翌年3月15日までに、贈与された居住用不動産又は贈与された金銭で取得した居住用不動産に居住し、かつ、その後も引き続き居住することが見込まれること
(4)同じ配偶者から、過去にこの配偶者控除の適用を受けていないこと
(5)贈与税の申告書を提出するときに、一定の書類を添付すること

この贈与税の配偶者控除が相続税対策に効果的であるとして知られているのは、次のような理由からです。
(1)配偶者へ居住用の不動産を贈与すれば、相続財産から外れるため、相続税が課税されない。
(2)贈与税の非課税枠として2000万円が認められているため、贈与税も課税されない。

つまり、相続税も贈与税も課税されないという素晴らしい特例だと言われています。
そのように理解することが、本当に正しいこ
となのでしょうか?

 

【贈与税の配偶者控除は、相続税の節税効果は期待できない】
相続税対策のご相談に来られるお客様の多くは、「一次相続と二次相続を考慮して、家族として最も相続税が安くなる方法が知りたい」とおっしゃいます。
このようなお客様の場合、二次相続までも考慮した相続税対策を計画することが必要となります。
このとき、贈与税の配偶者控除を活用する・しないで、相続税の節税効果としてはどの程度期待できるのでしょうか?

例えば、次のような事例で検証してみます。
(1)被相続人・・・父
(2)相続人・・・・母、子供1人
(3)相続税が課税される遺産の総額・・・6億円
(4)遺産分割の方法・・・法定相続分
(5)その他・・・相続税の配偶者控除をフル活用する

贈与税の配偶者控除を活用しなかった場合の相続税

項目 一次相続 二次相続 合計
相続税の課税価格 6億円 3億円
相続税の基礎控除 7000万円 6000万円
相続税が課税される遺産の総額 5億3000万円 2億4000万円
相続税額 8900万円 7900万円 1億6800万円
贈与税の配偶者控除を活用した場合の相続税
項目 一次相続 二次相続 合計
相続税の課税価格 5億8000円 3億1000万円
相続税の基礎控除 7000万円 6000万円
相続税が課税される遺産の総額 5億1000万円 2億5000万円
相続税額 8500万円 8300万円 1億6800万円
以上の事例では、一次相続と二次相続のトータルの相続税額は変わらず、贈与税の配偶者控除を活用しても相続税対策にはならないことがわかります。

 

【相続人が多い場合でも相続税の節税効果は費用倒れになることも】
事例よりも相続人が多くおられる場合、贈与税の配偶者控除を活用することで、相続税について多少の節税効果が見込まれます。

しかしながら、贈与をする財産が不動産になりますので、贈与税とは別に次のような費用がかかります。
(1)不動産取得税
(2)登録免許税
(3)司法書士への報酬

多少の相続税が節税できたとしても、これらの費用を上回る節税効果がなければ、生前贈与を実行する意味はありません。

 

【贈与された居住用不動産は、小規模宅地の評価減が受けられない】
また、相続税を計算するときに、贈与された居住用不動産は小規模宅地の評価減を受けられません。

小規模宅地の評価減は、土地の評価を80%減額してくれる特例ですが、この特例が受けられないため、相続税額に大きく影響してきます。
そのため、生前贈与をせず、何もしない方が相続税の節税効果が大きい可能性もあります。

相続税対策を行う場合は、あらゆるケースを想定する必要があると思います。

 

【相続税の節税効果が期待できるのは、贈与された配偶者が先に亡くなること】
配偶者へ居住用不動産を生前に贈与することで、相続税の節税効果が見込めるのは、居住用財産を贈与された配偶者が先に亡くなるケースです。
配偶者へ生前に贈与された居住用不動産を、子供が相続すれば、二次相続まで考慮した場合の相続税について節税効果が期待できます。

一般的には、「相続税を節税することを目的として、配偶者に生前贈与をしておく」という考え方で、生前贈与が実行されると思います。
ところが、二次相続を考慮した場合、財産の贈与を受けた配偶者が財産を贈与したご本人よりも先に亡くなった場合に、相続税の節税効果が出るという皮肉な結果となります。

このようなことから、贈与税の配偶者控除は、相続税対策のために活用するのではなく、残された配偶者の生活を支えるという視点で活用することに意味があると思います。

 


【相続税対策参考ブログ】

・相続税対策に活用する生前贈与


・相続税対策に活用する生前贈与のリスク(2011/08/08)

・相続税対策に生前贈与をすると有利な財産(2011/7/14)

・相続税対策に生前贈与の非課税を利用する(2011/7/12)


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