相続税対策において、財産を生前に贈与をする目的は、相続財産を少なくすることです。
さらに、相続財産が増加することを防ぐことで、相続税を増やさないことも目的としています。
ここで、「相続財産の増加を防ぐ」とは、何を意味しているのでしょうか。
【賃貸マンション・アパートの相続税対策は年数が経過すれば効果が薄くなる】
相続税対策のために、賃貸マンションやアパートを建設される方が多いです。
確かに、預貯金などを土地や建物などの不動産に組み替えることで、相続税評価額を下げる効果があります。
ところが、その相続税対策の効果は、マンションやアパートの建築直後のものであり、相続があったときのものではありません。
例えば、相続税対策に賃貸マンション・アパートを活用する場合、次のようなことが前提となっています。
(1)賃貸マンション・アパートの資金収支は、通常プラスとなっている。
(2)賃貸マンション・アパートの建築から20年から30年後には、借入金は全額家賃収入で完済できるようになっている。
つまり、
(1)資金収支がプラスであれば、家賃収入という形で預貯金が増加し、相続財産が増加
(2)借入金の返済が進めば、相続財産としての負債が減少し、相続財産が増加
することになるため、賃貸マンション・アパートの建築年数が経過することで、当初の相続税の節税効果が薄くなることは明らかです。
それにも関らず、相続税の節税効果だけは当初の効果が独り歩きすることになっているのが大きな矛盾点です。
【賃貸マンション・アパートの生前贈与を検討】
以上のように、賃貸マンションやアパートは将来的には相続財産を増やす効果があるため、当初見込まれた相続税対策の効果は薄くなります。
ここで、「相続財産の増加を防ぐ」ことを目的として、賃貸マンションやアパートを生前に贈与をすることで、相続税対策になります。
この場合、生前贈与をするのは、賃貸マンションやアパートの「建物のみ」です。
家賃収入は、建物を所有している人のものになります。
そのため、建物のみを生前贈与することで、家賃収入は建物の贈与を受けた子供さんやお孫さん(将来の相続人)のものになります。
生前贈与をすることで、預貯金の増加を防ぐことになりますので、「相続財産の増加を防ぐ」ことができます。
【相続税の納税資金の対策と所得税の節税対策にもなる】
賃貸マンションやアパートの建物のみを生前に贈与をすることで、「相続財産の増加を防ぐ」ことができます。
これ以外にも、生前贈与をするメリットが2つあります。
(1)相続税の納税資金の対策になる
(2)所得税の節税対策になる
(1)相続税の納税資金の対策になる
家賃収入は、建物の贈与を受けた子供さんやお孫さん(将来の相続人)のものになります。
子供さんやお孫さん(将来の相続人)の預貯金が増加することになりますので、将来に相続があったとき、相続税を支払うための現金を確保することができます。
(2)所得税の節税対策になる
家賃収入は、建物の贈与を受けた子供さんやお孫さん(将来の相続人)のものになります。
賃貸マンションやアパートを所有している方が高額所得者の場合、所得を分散することができます。
その結果、高額所得者の方の所得税の節税対策にもなります。
【相続税対策参考ブログ】
・相続税対策に活用する生前贈与
・相続税対策に活用する生前贈与のリスク(2011/08/08)
・相続税対策になるのか?配偶者への居住用不動産の生前贈与(2011/07/16)
・相続税対策に生前贈与の非課税を利用する(2011/07/12)
