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2016/12/21
相続税対策目的の養子縁組は無効なのか?最高裁結審

相続税対策に養子縁組、これは相続税対策の王道として知られている手法です。
この相続税対策を目的とした養子縁組が有効かどうかが争われ、最高裁で結審し、判決は2017年1月に言い渡されます。

この件について、TBSテレビからインタビューによる取材依頼がありましたが、税理士長嶋は出張のため不在にしておりましたため、お受けすることができませんでした。
このブログにて税理士長嶋の私見を述べさせていただき、次の2点を整理していきます。
(1)相続税対策に養子縁組をすると法定相続分が減ることを理解しているか?
(2)相続税を計算する際に、なぜ養子の数に制限が加えられているのか?

 

(追記:2017年2月1日)
【相続税対策に養子を認める最高裁判決】
2017年1月31日、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)において、「相続税対策のための養子縁組でも直ちに無効になるとは言えない」とする判断を示し、無効とした2審・東京高裁判決を破棄する判決を言い渡し、有効とした1審・東京家裁判決が確定した。

最高裁小法廷は「相続税対策という動機と養子縁組に必要な縁組の意思は併存し得る」と指摘し、「縁組の意思がないことをうかがわせる事情はない」と判断して縁組を有効とした。

 

 

(時事通信:2016年12月20日)
節税目的で養子、来年1月判決=有効と初判断か―最高裁
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161220-00000049-jij-soci

節税目的の養子縁組が有効かどうかが争われた訴訟の上告審弁論が20日、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)で開かれ、結審した。
判決は来年1月31日。

無効とした高裁の結論変更に必要な弁論が開かれたため、有効とする初判断が示される可能性がある。
養子縁組は相続税の節税策の一つとして知られており、判決は注目を集めそうだ。

争われたのは、2013年に82歳で死亡した福島県の男性が生前に行った、長男の子どもとの養子縁組。
男性の長女と次女が無効だと訴えた。

上告審で孫側は「養子縁組届であることを認識して男性は署名、押印をしており、縁組の意思はあった」と主張。
長女らは「相続税対策のみを目的とした養子縁組が認められれば、脱法行為を容認することになる」と訴えた。

一審東京家裁は有効と判断したが、二審東京高裁は「税理士が勧めた相続税対策にすぎず、男性は孫との間に真実の養親子関係を創設する意思はなかった」として無効と結論付けた。





【相続税対策に養子縁組をすると法定相続分が減ることを理解しているか?】

相続税対策に養子縁組、コストがかからず即効性のある手法として広く知られています。
養子縁組をすれば、確かに相続税を節税する効果が期待できます。

冷静に考えなければならないのは、物事には必ず「表・裏」があるということです。
「表・裏」、つまりメリット・デメリットのことですが、相続税対策に養子縁組をすると次のようなメリット・デメリットがあります。
詳細は、相続税対策ブログ「養子縁組を利用した相続税対策はうまくいくのか?」においてご紹介しております。

・メリット
相続税対策になる

・デメリット
法定相続分が減る

 

メリットである相続税対策になることは誰が見てもわかりやすいため、受け入れやすいのは十分に理解します。
税理士長嶋個人的には、むしろデメリットをよく理解する必要があると考えます。

相続税対策に養子縁組をする際のデメリットである「法定相続分が減る」とはどういうことなのでしょうか。

民法上、養子も実子も法定相続人になるため、遺産を相続する権利があります。
単純な話ですが、法定相続人が増えれば、各人の遺産相続分である法定相続分が減るのは当たり前のことです。
原告の長女・次女は、この点に不満があったのではないかと推測します。

相続税は法定相続人が多くなれば節税になる仕組みになっていますので、相続税の節税と法定相続分の減少は相反するものです。

 

 

【相続税を計算する際に、なぜ養子の数に制限が加えられているのか?】
現在の相続税法においては、相続税を計算する際に養子の数が制限されています。
いつ・なぜ、養子の数に制限が加えられたのでしょうか?
現在を理解するには、過去の歴史を知ることが重要であると税理士長嶋は常々考えています。

相続税を計算する際に養子の数が制限されたのは、昭和63年のことです。
昭和63年といえば、バブル経済の最盛期で、相続税の最高税率は70%という時代でした。
不動産の地価が高騰し、相続税の負担が非常に重いことから、不動産オーナーは相続税対策に相当悩みました。

そこで、コストもかからず即効性が期待できる養子縁組に注目が集まり、相続前に子供の配偶者や孫と養子縁組をして、法定相続人を増やすことで相続税を節税しようという人が増えました。

極端な事例では、10人以上と養子縁組をする、あるいは亡くなる前日に養子縁組を行うなど、露骨な相続税対策が横行しました。
このような背景から、昭和63年の税制改正において、養子の数に制限を加えられることとなり、現在に至っています。

 

 

【そもそもこの裁判は原告の負け戦であった可能性も!?】
相続税対策を目的とした養子縁組が有効かどうかが争われた本件の原告においては「単なる相続税対策目的の養子縁組は無効である」との主張がなされています。

現在の相続税の税務調査においても、養子縁組の有効性が問われる場面があります。
例えば、認知症など意思能力がない状態で相続開始直前に養子縁組をして、養子は一切財産を相続しないケースなどです。
この場合、税務署は民法上の養子そのものを否定するのではなく、相続税を計算する際の法定相続人に養子をカウントしないという対応を取ります。

 

二審の東京高裁は「税理士が勧めた相続税対策にすぎず、男性は孫との間に真実の養親子関係を創設する意思はなかった」と結論付けています。
真実の親子関係があったかどうかを裁判所が本当に判断できるのでしょうか?
当人の心の中の感情を法が裁けるのか、裁いてよいものなのか?少々違和感を覚えます。

日本は法治国家であるがゆえ、法的な制度として有効かどうかが論点であり、当人の意思の有無まで考慮して法的な判断を行うことは法治国家という制度そのものの存在意義が問われることになるだろう。
相続税対策を目的とした養子縁組が無効となれば、養子縁組の制度そのものの是非が問われることになります。

 

もし仮に税理士長嶋が原告の弁護士の立場であるならば、養子縁組を行った際に意思能力があったかどうかを争います。
論点を「相続税対策目的」にしてしまいますと、論理構成として「養子縁組が成立していることは認めるが、相続税対策目的だから無効」という主張になるでしょう。

原告は「相続税対策のみを目的とした養子縁組が認められれば、脱法行為を容認することになる」と訴えてはいるものの、そもそも、税務署は相続税対策を目的として養子縁組が行われることを承知しており、そのために昭和63年に税制改正を行った歴史的事実があります。
民法上の親子関係の養子縁組の話と、相続税の養子の話はまったく別物であることは言うまでもありません。

論点を「相続税対策目的」にしてしまったことで、ストーリー展開に無理が生じており、原告弁護士のミスリードの可能性さえあります。

 

もし何らかの理由により、養子縁組を行った際の意思能力が争えないのであれば、そもそもこの裁判は原告の「負け戦」であったのではないでしょうか。

もし負け戦であった場合、この裁判において誰が得したのでしょうか。
原告の弁護士です。
弁護士は裁判しないと報酬を得られないため、何でもかんでも裁判に持ち込もうとする人がいるのも事実です・・・

 

 

【相続税対策参考ブログ】
・相続税対策に活用する養子縁組のデメリット(2012/12/19)

・相続税対策による養子縁組でトラブルに巻き込まれている(2012/11/29)

 

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