相続税対策専門の税理士が運営する
東京都渋谷区のコンサルティング会社です。

会社案内
代表者プロフィール
メディア出演・制作協力
不動産はご先祖からの預り物
不動産は時代遅れの対策
自社株対策の限界
自社株対策が簡単ではない理由
自社株の株価を引き下げる
自社株の株数を減らす
相続税の納税資金を確保する
医療法人対策の限界
海外移住は幼稚な節税対策
プライベートバンクの世界へ
養子縁組を利用した相続税対策はうまくいくのか?
高額所得者のための 所得税の節税
相続税対策ブログ
相続税対策ブログ

相続税対策ブログ

2018/09/10
相続税の申告、不動産鑑定士の鑑定評価を税務署は認めず

相続税の申告をする際に、土地の相続税評価額を路線価により計算するのではなく「不動産鑑定士による鑑定評価額で申告すれば相続税の節税ができる」と宣伝している税理士・不動産鑑定士が一定数います。
ところが、不動産鑑定士による鑑定評価額で相続税の申告をすることを税務署が認めるのはケースバイケースであることを知らない税理士・不動産鑑定士が一定数いることも事実で、注意が必要でしょう。
なぜなら、税務署が不動産鑑定士による鑑定評価額で相続税の申告をすることを認めなかった場合、当然のことながら追徴課税となり、不動産鑑定費用も無駄になるためです。

ここで、土地の相続税評価額を路線価で計算すべきか、不動産鑑定士による鑑定評価額によるべきかが争われた東京地裁の裁判事例をご紹介します。
結論から申し上げると、税務署は不動産鑑定士による鑑定評価額による相続税申告を認めませんでした。
なぜ、税務署は不動産鑑定士による鑑定評価額により相続税の申告をすることを認めなかったのでしょうか?




【そもそも「不動産鑑定をしてはいけない土地」だった】
東京地裁の判決文を読んだ税理士長嶋の私見ですが、この案件を担当した税理士・不動産鑑定士ともに「相続税を知らない人なのでは?」と感じました。
裁判となったA土地・B土地は、そもそも「不動産鑑定をしてはいけない土地」だったと感じます。

誤解のないように繰り返しますが、裁判で負けた理由は「不動産鑑定士の鑑定評価書の内容がお粗末だった」のではなく、そもそも「不動産鑑定をしてはいけない土地」だったのです。
そもそも「不動産鑑定をしてはいけない土地」であるため、もし仮に不動産鑑定士の鑑定評価書の内容が完璧だったとしても、裁判結果は同じ「負け」です。
「不動産鑑定をしてはいけない土地」とは、このようなことを意味します。

地裁で争う前段階として、国税不服審判所でも負けているはずですが、この時点で「不動産鑑定をしてはいけない土地」であることを誰かが気づくべきだったのですが、残念ながら誰も気づかなかった。
裁判の当事者となった納税者は、負けることが最初からわかっているのに地裁で裁判をすることになってしまい、安くはない弁護士費用も最初から無駄になることが決まっていました。

匿名ではありますが、このように裁判結果が日本国民すべてに知れ渡ることとなり、当事者としては気持ちがいいはずがありません。
勝ち目があって裁判をしたのでしたらまだ諦めもつくのでしょうが、最初から負け戦とわかっていた裁判だったと感じます。

相続税を知らない税理士・不動産鑑定士が相続税を扱ってはいけないことがよくわかる残念な裁判事例です。




【相続税を誰に相談していいのかわからない】
そもそも、税理士から紹介された不動産鑑定士が「なぜ相続税について土地の鑑定をしているのか?」を疑ってかかるべきでしょう。

不動産鑑定士の本来業務は、国土交通省や都道府県が公表する「公示価格」・「基準地価」の鑑定評価です。
国や都道府県から「公示価格」や「基準地価」の鑑定評価の依頼があれば、一般的な不動産鑑定士は生活に困らない程度の収入を確保できますので、無理に相続税の分野に手を付ける必要がありません。
もし、不動産鑑定士の本来業務の仕事がなければ、自身の生活費を確保するために他の仕事をしなければなりません。

相続税の基礎控除が引き下げられた2015年以降、相続税が増税されたことは世間一般にも注目されましたが、これを機に仕事がなく相続税を知らない税理士・不動産鑑定士が相続税の分野に目を付けることになります。
その結果、「相続税専門」と称する専門家が爆発的に増え、「専門」という言葉がチープなものに成り下がることになります。

誰が本当に「相続税専門」なのか?何を基準に「相続税の専門家」と判断するのか?
その判断基準がないままに、みなさまは税理士・不動産鑑定士を雇うことを迫られ、この判断基準がないことが相続税をより難しくしていると税理士長嶋は感じます。




【東京地裁平成30年3月13日判決】

(結論)
土地の相続税評価額は、路線価により計算することが妥当。

(理由)
路線価により土地の相続税評価額を計算することは合理的であり、路線価以外の方法により土地の相続税評価額を計算することに特別の事情はない。
また、不動産鑑定士による不動産鑑定額には問題点がある。




【事の経緯】
納税者は相続税の申告に際し、A土地・B土地の2つの土地について、路線価ではなく不動産鑑定士による鑑定額により相続税評価額を計算した。


(納税者の主張)
不動産鑑定士による鑑定評価額を時価とすべきであり、不動産鑑定士による不動産鑑定額は次の通りである。

・A土地:4000万円
・B土地:3600万円


(税務署の主張)
A土地・B土地の相続税評価額は路線価により計算するべきで、路線価による相続税評価額は次の通りである。

・A土地:5621万円
・B土地:5695万円




【不動産鑑定士による不動産鑑定額の問題点】

(A土地の不動産鑑定額の問題点)
鑑定評価書に記載された取引事例4件の価額は著しく安い価格である。


(B土地の不動産鑑定額の問題点)
鑑定評価書に記載された取引事例のうち1件は売り急ぎによる事例であり、この事情を考慮していないだけでなく、合理的な説明もない。




相続税対策などこんなご不満やご希望をお持ちではありませんか?